北海道中央バスは、TISIと共同で生成AIとGPSを連動させたモビリティ型の音声ガイドを開発した。バスの移動に合わせて車窓から見える観光情報を多言語で提供する。11月4日から札幌駅北口発着の定期観光バスで運用を始める。既存の音声ガイドシステムと比べ、維持管理費用を70%以上、新規導入コストを80%以上削減できる見込みだ。10月30日、TISIと北海道中央バスが発表した。
札幌市には国内外から年間1600万人を超える観光客が訪れ、2025年度の外国人宿泊者数は248万人を超えた。訪日外国人の国・地域が多様化するなか、案内の質を高めながら対応コストを抑え、持続可能なサービスを維持することが課題になっている。北海道の交通・観光事業に精通した北海道中央バスと、デジタル技術やAIを持つTISIが共同で開発と実証に取り組んだ。
新しい音声ガイドはGPSと連動し、バスの移動に合わせて北海道遺産や観光スポットなど地域が伝えたい情報を観光客に届ける。音声に加えて多言語のテキストや画像も表示する。観光客は専用アプリをインストールする必要がなく、自分のスマートフォンで2次元バーコードを読み取るだけで使える。
事業者は専用の編集画面に日本語のテキストを入力するだけで、生成AIが翻訳と音声合成を行い、多言語のガイドページを作れる。公開前に内容を確認できるプレビュー機能を備え、地域周遊型やモビリティ型など用途に応じたテンプレートを選べる。多言語ガイドの作成に当たり、語学力のある人材の確保や専門業者への委託を必要とせず、観光案内業務を効率化できる。従来の音声ガイドはバスへの設備投資が必要だったが、新サービスは既存の車両設備をそのまま使える。
両社は2025年11月から2026年1月にかけて、札幌市内と支笏湖・洞爺湖の2コースで各3回の試乗検証を実施した。高速道路や山間部を含め、観光バスの速度に応じて音声案内が動作することを確認した。山間部など通信環境が弱いエリアでも、主要道路では遅延なく利用できた。
11月4日から「冬の支笏湖・洞爺湖周遊コース」で、英語、繁体字、簡体字、韓国語の4言語に対応した音声ガイドを導入する。12月1日からは「冬の札幌午前観光コース」と「冬の札幌午後観光コース」にも広げる。北海道中央バスは、多言語対応の拡充にも柔軟に対応でき、運行内容を変更する際の案内の更新コストも抑えられると評価している。
今後は利用データを活用して観光客のニーズを把握・分析し、発信内容の改善を進める。周遊促進や観光体験価値の向上につながる施策への活用も検討する。両社は道内のバス事業者や観光協会、DMO(観光地域づくり法人)、旅行会社などに向けて、観光DXのモデルとして展開することを目指す。