日本プラストは製造業向け調達データプラットフォーム「UPCYCLE」を導入した。2024年11月28日、A1Aが発表した。
日本プラストは自動車の安全部品や内外装部品を製造・販売する企業。同社は中期経営計画において、効率化推進と成長投資を通じた経営基盤強化による企業価値の最大化を目指している。この取り組みの一環として、購買部では適正価格での調達を実現するため、業務の効率化と精度向上が重要課題となっていた。
日本プラストの購買部門は、樹脂に関連する原材料やプレス部品、シール、ガラス、電池など多岐にわたる品目を調達している。同規模の企業と比較すると購買部門の人員体制は必ずしも十分とは言えない状況であり、さまざまな仕組みをうまく使って仕事をよりスムーズ、正確にやっていきたいと考えていた。経営観点からは、購買部門には適正な価格で購入すること、しっかりと売り買いの中で利益を出すことへの貢献が求められている。
購買業務における課題として、コストに関する情報の属人化や担当者間のスキルのばらつきが挙げられていた。完成車メーカーである顧客企業では、さまざまなコストに関するデータが蓄積されており、たとえばある部品のネジが一つあたり3円であるのに対し、異なる部品ではそのネジが4円になっているといった比較が一目瞭然にできるようコストのデータを比較できる仕組みを有している。一方で日本プラストでは、そうした業務に際しては昔ながらの紙での管理が主流だった。
また、この3~4年で人事異動などを含め人の入れ替わりが多く、購買本部の25名中10名く程は購買経験3年未満で、新任管理職が2名ほど他部門から異動してきたばかりの状況にあった。こうした人の流動性のリスクが高まっている状況下では、業務で取り扱う情報を活用できるデータとして残さないと、見積比較すらできなくなるとの危機感があった。
加えて、CASEの流れの中で自動車の開発プロセスがどんどん短くなっており、顧客である完成車メーカーへの見積回答の納期が短縮され、2週間程度で回答しなければいけなくなっていた。このような状況下では、紙で保管している見積書の中から過去のファイルを遡って比較対象を探すことは時間的に不可能だった。
こうした課題を解決するため、日本プラストはUPCYCLEの導入を決定した。UPCYCLEは、見積書をシステム上にアップロードするだけで、見積書に記載された見積明細情報がデータ化され、UPCYCLE上での比較・分析機能により、データに基づくコストダウン余地の発掘が可能になる。
UPCYCLE導入の決め手は、見積査定に注力できる点と、個別品に強いシステムである点だった。日本プラストでは、取引先は約120社で、毎年2~3社程度しか新規のサプライヤーは入ってこない。特に静岡を中心とした地場のサプライヤーとの付き合いが多い中、発注先もある程度限られているため、見積依頼の業務は比較的容易だった。そのため、どのサプライヤーに見積依頼を出すかの部分をシステム化するよりは、出てきた見積回答に対し、時間が厳しい中でも査定を強化できる仕組みが求められていた。
日本プラストでは過去10年にわたりさまざまなシステムを内製で開発してきたが、世の中の進化のスピードについていくのが難しいと感じていた。特に昨今の製造業のDX化の流れの中で、自社で開発したシステムがどんどん陳腐化してしまい、世の中の変化に対し自力では対応できなくなっていた。
UPCYCLEで、日本プラストはタイトなスケジュールの中でも適正価格での調達を目指す。過去の見積もりを正しくデータ化し、データベースを構築して、タイトなスケジュールに対ししっかりと見積もりを作って出せるようになると期待している。また、経験や知識が不十分な担当者も、システムを使ってすぐに見積査定ができることも期待されている。
日本プラスト常務執行役員購買本部長の錦織氏は、「期限を守って、適正な価格で買いたい、この事に尽きる。時間がどんどん短くなっている中、その期限に遅れないようにするには、出てきた見積もりに対していかに早く、しっかりと解析したうえで、良い悪いの判断をできるかが重要。『これは適正な値段だね』とか、あるいは『ここはこれくらいの値段になるはずだ』と、素早く答えが出せるようにしていきたい」とコメントしている。