鹿島建設、光ファイバセンシングで工事振動をリアルタイム可視化--NTT東日本・NECと共同で実証実験

2024年9月9日07:55|ニュースリリース公開日 2023年8月24日|ニュースCaseHUB.News編集部
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 鹿島建設は、NTT東日本、NECと共同で、光ファイバセンシング技術を活用し、通信用光ファイバを振動センサとして活用する実証実験を行い、トンネル掘削工事の振動検知に世界で初めて成功した。2023年8月24日、3社が発表した。

 都市部や住宅街で建設工事を進める際に、周辺住民の理解と協力が重要性を増している。特に工事による振動の影響は、周辺環境への配慮、住民の不安軽減のためにも常に把握が求められる。しかし、工事で発生する振動は種類が多く、影響範囲や程度を予測するのが難しい。計測のために現場敷地外に複数の振動計を長期間設置し、人手による巡回計測を行うには限界があった。

 そこで3社は、NTT東日本の通信用光ファイバと、NECと鹿島建設の光ファイバセンシング技術を用い、トンネル掘削工事による振動を計測して、工事振動の影響範囲を常時かつ面的に可視化する実証実験を2022年1月から2024年3月まで実施した。実証実験では、トンネル掘削工事現場の周辺に敷設されている通信用光ファイバの上部側終端部にセンシング装置を取り付け、建設機械等(振動源)に起因する振動が、周辺の地盤から電柱を経由して一般通信用光ファイバに伝わる状況を2022年1月から2023年6月にかけモニタリングした。

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通信用光ファイバを用いたセンシングによる工事振動モニタリングの概要

 今回の実証実験では、通信用光ファイバを用いたセンシングで検知した振動から、工事に起因する振動を抽出する処理を行った。その結果、トンネル掘削工事による振動の影響範囲を常時かつ面的な可視化に成功した。本技術は、(1)市中に張り巡らされている通信用光ファイバが振動センサとなるため、新たなセンサの設置が不要、(2)センシング装置を接続した通信用光ファイバの全長でかつ同時に、振動分布のモニタリングができる、(3)計測から可視化まで人手を介さないため、24時間365日モニタリングし続けられる、(4)工事に由来する振動のみをリアルタイムに抽出し、地図上へのマッピングができるといった特長を持つ。

 実証実験における各社の役割は、NECが光ファイバセンシングによる測定およびデータ分析、鹿島建設が建設機械の稼働状況や地質等の現場条件に基づく振動データ分析と建設現場における光ファイバセンシングに関する知見の提供、NTT東日本が工事振動モニタリングに向けたデータ取得希望箇所における対応可否等の検討、および実証実験用光ファイバの提供を担った。

 3社は今後、今回の成果を踏まえ、さまざまな工事振動を常時計測、可視化する方法の検討を進め、将来的には周辺地域への影響を最小限に抑えた工事の実現に貢献することを目指す。併せて、周辺環境に配慮した安全・安心な建設工事の実現に向けて、共創活動を行っていくという。 

ニュースリリースURL
https://jpn.nec.com/press/202308/20230824_01.html