墨田区、内部情報系刷新でカスタマイズ1割未満 財務・公会計統合で手作業解消

2025年12月22日14:10|ニュースCaseHUB.News編集部
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 墨田区は、内部情報系システムの統合と刷新を行った。中核となる財務会計システムとして、ジャパンシステムの「FAST財務会計」を採用した。12月22日、ジャパンシステムが発表した。独自のカスタマイズを10%未満に抑えつつ、財務会計と公会計の連携や行政評価の効率化を図った。職員の手作業負担を解消し、柔軟な働き方の基盤を整えた。

 墨田区では2022年に「墨田区行財政改革・行政情報化計画」を策定し、デジタル化を前提とした業務改革を進めていた。従来の内部情報系システムはインターネットエクスプローラー(IE)専用であったため、Microsoft Edgeへの対応が急務となっていた。業務面では財務会計と公会計が連動しておらず、決算時に支出を仕分け直す作業が発生していたほか、行政評価の集計をExcelで行うなど、企画部門の負担も大きかった。また、柔軟なコミュニケーションツールがなく、非常時の連絡手段にも課題を抱えていた。

 これらの課題を解決するため、区は「既存システムに縛られず、本当に必要なシステムを作る」という方針を掲げた。調達に向けた機能要件の策定では、20年間利用した旧システムの仕様に引きずられないよう、ICT担当がすべてのワーキンググループに参加。各所管課の要望をチェックし、目的ごとに機能を抽象化することで、特定の製品や既存仕様ありきではない要件定義を徹底した。

 調達プロセスにおいても独自の工夫を取り入れた。情報提供依頼(RFI)を2回実施し、1回目で課題感や費用感を確認した後、2回目までの間に事業者と機能のすり合わせを重ねた。機能要件に不足がある場合は運用での回避策を提案してもらうなど、双方向の対話を重視したことで、プロセスの透明性と所管課の納得感を高めた。

 システムの選定にあたっては、ジャパンシステムのレスポンスの速さと、柔軟な運用提案が評価された。パッケージ標準機能を最大限に活用し、カスタマイズを行わない運用を提案したことが採用の決め手となった。結果として、新システムのカスタマイズ率は10%未満に収まり、導入コストと将来的な保守コストの適正化を実現した。

 新システムの導入により、財務会計と公会計のデータ統合が実現した。これにより決算時の再仕分け作業が不要になり、業務負担の大幅な軽減が見込まれている。また、庁外からグループウェアへアクセス可能になったことで、出張時の業務連絡が円滑になり、非常時の連絡体制も強化された。運用面では、所管課職員とベンダーとの間に「相談すれば運用代替が見つかる」という信頼関係が生まれ、職員自身が主体的にシステム調達に取り組む意識改革にもつながっている。

 墨田区は、今回のシステム刷新で創出された時間を活用し、区民サービスの向上に取り組む方針だ。今後はFit&Gap(業務と機能の適合分析)を通じた調達ノウハウを活かし、データに基づいた質の高い行政運営を推進したい考えだ。

ニュースリリース