富士薬品は、提供するスマートフォンアプリ「セイムスアプリ」の改修を実施した。その基盤として、スパイラルのローコード開発プラットフォーム「SPIRAL ver.1」を採用した。9月30日、スパイラルが発表した。シングルサインオンの導入や購買データとのリアルタイム連携など段階的な改修により、キャンペーン対象商品の売上が前年対比で120%増を達成し、アプリ会員数は250万人を突破した。また、運用負荷の削減と顧客満足度の向上にもつながっている。
医薬品の開発・製造から配置薬、ドラッグストア「セイムス」の運営まで幅広く事業を展開する富士薬品は、店舗と顧客との継続的な接点を築くため、2022年2月にセイムスアプリを大幅にリニューアルした。しかし、当初は取引先メーカーとの共同キャンペーンを実施する際、顧客がキャンペーン参加のために会員番号、メールアドレス、パスワード設定などを都度入力する必要があり、利便性に課題が残っていた。キャンペーンが好評だったことを受け、アプリユーザーの利便性向上が急務となった。
そこで、同社は以前商品の予約受付に活用実績があったSPIRAL ver.1を、キャンペーン設計やデータベース連携への柔軟な対応力を持つプラットフォームとして、アプリ改修の基盤に採用することを決めた。
改修は段階的に実施された。第1弾として2022年にSPIRAL ver.1でシングルサインオン(SSO)を構築し、セイムスアプリに導入した。これにより、アプリにログイン済みの顧客は情報再入力が不要になり、キャンペーン参加のハードルが下がった。
続く第2弾では2023年に購買履歴システムとSPIRAL ver.1を連携し、商品の購入金額に応じたスタンプをアプリ内にリアルタイムで反映できるように改修した。従来、購買履歴を日次バッチで取得していたため、スタンプ反映にタイムラグが生じ、顧客からの問い合わせが多く寄せられていたが、リアルタイム連携により問い合わせはほぼゼロになった。この改修により、複数のキャンペーンを同時に安定運用できる体制も実現している。
顧客がアプリ中心に買い物を楽しめるよう、他サービスとの連携も進められた。LINEで提供していた「Web肌診断」をSSOでアプリと接続し、アプリ内からアクセスできるようにした。また、店頭のクーポン発券機「セイムスタッチ」と連携し、アプリ会員証をかざした場合はアプリにデジタルクーポンが表示される仕様に変更した。デジタルクーポンは対象商品の画像をカラーで表示できるようになり、利便性向上につながっている。
これらの改修の結果、キャンペーン実施や運用管理の手間が削減されたことで、メーカーからの実施検討が増え、以前は月に1個程度だったキャンペーンが、多い月では7個から8個並行して実施できるようになった。キャンペーン対象商品の売上は前年対比で120%増を達成している。
アプリ会員数も増加し、ダウンロード者数は250万人を超えた。月間アクティブユーザーは全セイムス会員の半数以上に達しており、アプリ会員が会員基盤の中心的な存在へと成長している。また、顧客へのアンケートでも「セイムスの魅力」として「キャンペーンが魅力的」という項目が上位に入るなど、顧客満足度の向上にも貢献している。
今後は、SPIRAL ver.1の機能を活用し、アプリ会員証、使用クーポン、ポイントカードなど複数のバーコードを一つに統合するワンバーコード化を検討している。富士薬品 ドラッグストア事業部 販売促進部 デジタル販促推進課 課長の福澤麻美氏は、「販促の中心であるアプリも含めて様々な販促にSPIRALはなくてはならないシステムになっていると思うので、今後もスパイラル社と連携しながらさらに使いやすいアプリにしていきたい」とコメントしている。