住信SBIネット銀行は、外貨送金および外貨受取サービスにおける取引審査フローの高度化を目的に、セゾンテクノロジーのiPaaS「HULFT Square」を採用した。11月19日、セゾンテクノロジーが発表した。複数のノーコードツールや生成AIとの連携基盤としてHULFT Squareを活用することで、短期間で高度な審査体制を構築し、年間で952時間の業務削減を実現した。同行は、内製化体制を確立することで、今後の継続的な業務改善に取り組む方針だ。
インターネット専業銀行として事業を拡大する住信SBIネット銀行では、個人・法人向けの外貨送金・外貨受取サービスを提供している。このサービスでは、マネーロンダリング・テロ資金供与・拡散金融対策(マネロン等対策)の強化が求められており、取引時の証跡確認を含めた審査フローの高度化が課題となっていた。
従来は、疑わしい取引について顧客からメールやFAXで資料を送付してもらい、手作業で確認していた。限られたリソースでの対応のため、このまま高度化を進めると業務負荷が増大すると想定された。そこで、少人数でも高度な審査を可能にするため、複数サービスを組み合わせた環境の整備を検討。金融業界の規制は頻繁に更新されるため、大掛かりな仕組みはすぐに陳腐化する恐れがあることから、短期間でリリースし、ユーザー部門のフィードバックを受けながら最適化できるノーコードツール群の活用が適切と判断した。
各種サービスを柔軟に接続する連携基盤として、フルマネージドで利用できるHULFT Squareに注目。複数のiPaaS製品を比較した結果、スクリプトの設計・開発ができるGUIの操作性が最も高かった点、各種ソリューションとのコネクターが豊富に提供されている点を評価し採用を決めた。ワークフローの構築で採用を検討していたサイボウズの「kintone」との連携で、API接続だけでなくレコード取得やテーブルへの行追加・行更新といった深い処理ができる親和性の高さも採用の決め手となった。
審査フローでは、データ連携のハブとしてHULFT Squareを活用し、外貨送金関連システムやkintone、スパイラルの「SPIRAL ver.2」、さらに翻訳やOCR処理を行う「Azure AI 翻訳」、「Azure AI Document Intelligence」、審査対象の抽出に「Azure OpenAI Service」といった複数のノーコードツールやAI技術を連携させている。APIを持たないソリューションに対してはRPAを活用することでデータを抽出している。
高度化された審査フローの整備と各種ソリューションの活用により、月平均で79時間、年間952時間の業務削減効果が得られた。審査対象の資料を受付番号とひもづけて取得可能となったため、職人技でひもづけを行っていた時間が大きく短縮され、業務効率化に貢献している。口座数が増加しても、審査フローの高度化により業務負荷の増大を抑えられている。
導入プロジェクトは、プロジェクト開始から新たな審査フローへの移行まで約3カ月で実現。HULFT Squareのスクリプトは3週間ほどで構築され、現在も継続的にアップデートしながら業務改善を行っている。
同行業務部業務管理グループの松村剛哉氏は、「これまでは改修費用負担が大きく実現できなかった要望も、今ではコストをかけずに自分たちで解決できるようになったのは何よりのことだ」とコメントしている。今後は、AI活用がさらに加速すると見込まれるため、HULFT Squareの活用範囲を広げながら、スクリプトを作成できる開発者の育成にも取り組み、さまざまな業務課題の改善を進めていく。