沖縄振興開発金融公庫は、データ活用の高度化を目的に、クラウドベースのデータ分析基盤「Azure Databricks」とBIツール「Microsoft Power BI」を採用した。Azure Databricksなどの導入を支援したジールが発表した。情報システム部門に依頼せずとも業務部門が自らデータ分析を行える環境を整備したことで、従来は年間約4000時間を要していた帳票作成工数を約1300時間削減した。今後はAI活用や高度な分析モデルの開発も視野に入れる。
沖縄振興開発金融公庫(以下、沖縄公庫)は、沖縄の政策金融を一元的に担う政府系金融機関だ。離島を含む広大な地域を対象に、産業基盤整備や中小企業支援、スタートアップ支援など多岐にわたる業務を展開している。同公庫は2023年3月に「沖縄公庫DX戦略」を策定し、重点施策の一つとしてデータ活用の高度化を掲げていた。
従来の環境では、業務部門がデータを活用する際、その都度情報システム部門へ抽出を依頼する必要があった。データの提供までに数週間を要する場合もあり、タイムリーな意思決定の妨げになっていたという。また、情報システム部門側でも、複雑なデータベース構造からデータを加工・提供する作業が大きな負担となっており、年間約4000時間もの工数を費やしていた。
これらの課題を解決するため、沖縄公庫はデータの収集から分析までを一貫して行う基盤の構築と、BIツールの導入、そしてデータ活用人材の育成という三つの方針を定めた。
基盤としてAzure Databricksを採用した理由は、将来的なデータ増大に対応できる拡張性に加え、データエンジニアリングからAIによる推論までを単一基盤で統合できる点を評価したためだ。また、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)に登録されている信頼性も選定の決め手となった。BIツールにMicrosoft Power BIを選定したのは、普段利用しているExcelなどと操作感が共通しており、業務ユーザーがスムーズに導入できると判断したためだ。
プロジェクトのパートナーには、沖縄に拠点を設けて常駐支援を行う体制を整えたジールを選定した。2024年7月に始動したプロジェクトでは、まず12部署で33種類の帳票作成を自動化。既存の帳票の視認性を維持しつつ、ユーザーが任意のタイミングでデータを参照できる環境を構築した。また、主要な経営指標を可視化する「マネジメントダッシュボード」も整備した。
導入の効果は既に現れている。情報システム部門の帳票作成工数は約3割削減され、業務部門ではデータ待ちによる機会損失が解消された。人材育成面でも成果が出ており、研修を受講した職員が自ら実務に直結するレポートを作成し始めている。
沖縄公庫情報システム統括室室長の久場兼修氏は、クラウド基盤の採用によりデータの民主化を実現しやすい環境が整ったとした上で、今後は削減されたリソースをより高度なデータ活用の取り組みに振り向けていきたいと述べている。
今後は2027年度にかけて汎用データマートの整備と人材育成を加速させ、2028年度以降はAIを活用した審査支援モデルの開発など、より高度な分析業務への本格運用を目指す方針だ。沖縄公庫業務統括部部長の慶田康成氏は、ファクトに基づくデータ分析による最適な提案が不可欠であるとし、今後もデータの価値を再認識しながら付加価値の創出に取り組む姿勢を示している。