県、ダムの運用方法見直しで発電量向上 シミュレーションで年間14%増の可能性導出

2025年9月18日11:50|ニュースCaseHUB.News編集部
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 長野県は、日立が提供する「ダム運用最適化ソリューション」を用いて、同県が管理する裾花ダムの運用シミュレーションを実施した。9月17日、日立が発表した。ダムへの流入量予測を必要としない独自の算出方法を確立し、追加の設備投資なしに年間発電量を過去の実績平均より14%向上できる可能性を導出した。今後は、実運用に向けた協議を進めていく。

 長野県は「2050年ゼロカーボン戦略」を掲げ、再生可能エネルギーの供給拡大に取り組んでいる。一方で、既設ダムの発電効率を高めることは、設備投資を伴わずに電力供給量を増やせる有効な手段として期待されている。

 こうした背景のもと、長野県企業局が運営する裾花発電所を対象に、日立の「ダム運用最適化ソリューション」を活用した理論検証を開始した。このソリューションは、ダムの過去の運転データを活用し、発電量を最大化する放流計画を導き出すものだ。

 今回の検証では、2000年から2024年までの25年間のデータを基にシミュレーションを実施。その結果、従来のダム操作規則に従った場合でも、理論上の最大発電量は過去の実績平均より19%多いことが判明した。さらに、流入量予測を使わずに最適な放流計画を導き出す「三水位モデル」を適用して検証したところ、年間発電量は過去実績比で14%の増加となることを確認した。このモデルは、現在時刻の流入量と水位に基づいて運用方法を決定するため、迅速な導入が可能である。

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将来的なダム運用最適化ソリューションの全体構想

 今後、長野県は今回の検証結果を踏まえ、日立が導き出した運用方法の実用化に向けた協議を、ダムの運転管理を担う建設部と進めていく。また、日立は今回の事例を広く周知し、水力発電所を運営する自治体や電力会社へのソリューション展開を進める方針だ。長野県は今回の検証結果について、追加の設備投資なしに水力発電量を増やせる費用対効果の高さに着目している。

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