大日本塗料、15年蓄積のERP資産をクラウドに継承、運用負荷を軽減

2025年9月30日22:33|ニュースCaseHUB.News編集部
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 大日本塗料は、基幹システムをSAPのクラウドサービス「SAP S/4HANA Cloud Private Edition」へ移行した。9月30日、移行を支援したTISが発表した。長期にわたり蓄積した既存のERP資産を継承しつつクラウドへ移行することで、運用の柔軟性を強化し、創業100周年に向けた「攻めの経営」を支えるシステム基盤を構築した。良質なデータ活用が容易になり、全社的なデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速も期待している。

 大日本塗料は1929年創業の塗料メーカーで、特に重防食技術を強みとし、大型建造物にも塗料が採用されている。同社は2008年からオンプレミス環境でSAP ERP(ECC6.0)を基幹システムとして運用し、塗料業界特有の商習慣に合わせた多数のアドオン開発を重ねてきた。

 しかし、アドオンの増加によりシステムの保守作業が複雑化していたことに加え、現行のSAP ERPの標準保守サポートが2027年に終了する課題もあった。このため、変化する事業環境に柔軟に対応できる新たなシステム基盤への刷新が急務となっていた。

 次期ERPへの刷新にあたり、同社はTISを含む複数のITベンダーから提案を受け、比較検討を実施。TISの提案は、既存のアドオン資産を有効活用しつつ、将来の事業成長に対応できる基盤への最適化を両立できる点が評価された。また、要件定義やユーザー教育、稼働直後の保守サポートなど、密な連携が必要な工程でTISがオンサイトサポートを提案するなど、大日本塗料側の負担軽減に配慮した提案も決め手となった。

 プロジェクトは2022年10月に開始し、単なるシステム移行にとどまらず、各部門の業務プロセスをゼロベースで見直すことから着手された。TISと共同で業務フローの再設計を進め、不要な業務の削除や手順の見直しを徹底した。

 既存の約100本のアドオンも詳細に分析し、約60パーセントを新システムへ移行、今後の成長に必要な約10パーセントを新規設計・開発、不要な約30パーセントを廃止する方針を決めた。これにより、システムの保守性と拡張性が大きく向上している。2年3カ月に及ぶ長期プロジェクトは予定通りに進行し、2025年1月に本番稼働を迎えた。

 新システム稼働後の効果として、クラウド化によるインフラ管理やバージョンアップ作業の負担軽減に加え、業務プロセス見直しとアドオンの最適化により、変化するビジネス環境に迅速に追随できる基盤が構築された。また、データが良質な状態に取り出しやすくなったことで、経営状況の可視化など全社的なDX推進の加速が期待されている。

 大日本塗料の取締役常務執行役員管理本部長兼財務部長である永野達彦氏は、「よく言われる『伴走』を超え、我々の一員としてやってもらえた。我々はSAP S/4HANAのすべてを知っているわけではないので、足りない部分をTISの知見で補完してもらうことで、満点のシステムにできたと思う」とTISの支援を評価している。

ニュースリリース