カクイチは、全国1万7000カ所以上に設けた太陽光発電設備の売電入金データを分析し、異常の兆候を早期に捉える仕組みを構築した。ウイングアーク1stが10月2日に発表した。ウイングアーク1stのデータアプリ基盤「MotionBoard」とAIテクノロジー「dejiren AI」を活用し、異常と判定した物件の情報を担当営業所のSlackに自動通知する。異常を検知してから現場が動き出すまでの対応スピードは、体感で2~3倍に向上した。
長野市に本社を置くカクイチは、1886年に銅鉄金物商として創業した。ガレージや倉庫、樹脂ホース、鉄鋼二次建材、ミネラルウォーター、ホテルなどを手がける。2013年には、自社が販売したガレージやカーポートの屋根を借り、同社が所有する売電用太陽光発電設備を設置する「太陽光パートナー事業」を始めた。設備の設置費用はカクイチが負担し、施主に初期投資は求めない。施主には屋根の賃料をキャッシュバックとして支払い、停電時には非常用電源としても利用できる。太陽光発電設備は全国約1万7000カ所に広がった。
太陽光発電設備の運用には課題があった。発電状況を把握する主な情報が、電力会社からの売電入金データだったためだ。入金は月次で発生するため、機器の故障やパネルの汚れで発電量が落ちても、数値に表れるまで1カ月以上かかる場合があった。異常の判定も、入金額が前月比で50%減少したかどうかという大まかな基準にとどまり、それに該当しない発電量の低下は捉えにくかった。
全国の設備状況を一元的に監視する部署や仕組みはなく、各物件の発電状況の把握や異常時の対応は、営業所の担当者に委ねられていた。対応の質や速さは個人の経験に左右されやすく、異常に気づいた後も、担当者が現地で状況を確認し、その後に電気工事業者へ修理を依頼するケースがあり、復旧まで時間がかかりやすかった。
同社は2019年から、全物件の入金状況を確認するために「MotionBoard Cloud」を利用していた。ただし、当初のダッシュボードは経営層が売上を俯瞰するためのものであり、設備異常を検知する機能は備えていなかった。
転機になったのは、組織横断チームが経営課題の解決に取り組む社内制度「タスク」だった。太陽光発電設備に関する異常値への対応をAIで最適化するテーマが設定され、チームは仕組みづくりに着手した。
まず、MotionBoard上に異常検知用のダッシュボードを作成した。最新の入金データを前月、前年同月、前々年同月のデータと比較し、差が大きい物件を一次エラー候補として抽出する。次に、MotionBoardとの親和性に加え、Slackとの連携にも対応するdejiren AIを採用した。
dejiren AIを介し、生成AIが過去と最新のデータを比較・分析して、一次エラー候補が実際に異常とみられるかを判定する。異常と判定する水準は、従来の前月比50%減から、20%程度の変動まで引き下げた。異常と判断した理由と、根拠となる売電金額の推移データは、物件を担当する営業所のSlackチャンネルに1件ずつ自動通知する。担当者はダッシュボードを確認しに行かなくても、異常の兆候を把握可能となった。
営業担当者が設備の異常を自分ごととして受け止めやすくなり、異常を検知してから現場が動き出すまでの対応スピードは、体感で2~3倍に向上した。同じ仕組みはグループ会社にも広がっている。樹脂ホースを製造するグループ会社では、前日の生産実績をMotionBoardから取得し、dejiren AIを介して毎日Slackに配信している。
ただし、異常検知の一次情報が売電入金データである以上、検知のサイクルは月次のままだ。今後は、積雪や台風の時期などの気象データも取り込み、季節要因による正常な変動と、対応が必要な異常を切り分ける構想がある。ベテラン社員の知識を後輩に引き継ぐ仕組みにも、AIを活用する考えだ。
DX推進グループ業務AI実装チームの六角勇亮氏は、「Slackは全社員が1日1回以上必ず見るツールだ。そこにdejiren AIで数字を加工したり表を送ったりすることで、数字の意識が現場の作業員にもかなり浸透してきたと思う」と話している。