オートバックスセブンは、米Rimini Street(リミニストリート)の第三者保守サービス「Rimini Support」を活用し、既存の基幹システムを維持したままAI活用と段階的なモダナイゼーションを推進している。IT予算の最適化により、2032年度の連結売上高5000億円という長期ビジョンの達成に向けた攻めの投資を加速させる計画だ。オートバックスセブンIT管掌を務め、デジタル子会社であるオートバックスデジタルイニシアチブ(ABDi)の社長を兼務する則末修男氏が2月20日、リミニストリート日本法人の事業戦略発表会に登壇し、戦略の詳細を語った。
オートバックスセブンは現在、国内1400店を超える店舗網を軸に、車検や中古車事業、海外展開などビジネスモデルの多角化を進めている。2025年3月期に2495億円だった連結売上高を、2032年度には5000億円まで引き上げる目標だ。この目標達成に向けて、いかに企業価値向上に直結する「攻めのIT投資」の財源を捻出するかが課題だったという。「当社は売上高の1.5%をIT投資に充てているが、セキュリティ対策や保守コストが増大する中で、企業価値向上に直結する投資とのバランスを適切にコントロールする必要があった」と則末氏は振り返る。
この課題解決のカギとなるのが、Rimini Supportの活用だ。同社は2005年にERP「SAP ECC 6.0」を導入し、2012年にバージョンアップ。2016年に、コスト削減策の一環としてSAPの保守サービスからRimini Supportに切り替えた。2023年にはこの契約をさらに3年延長し、近年ではSAPだけでなく「Oracle Database」の保守サービスもリミニストリートに委託している。則末氏はこの決断の理由について次のように明かした。
「保守品質はそのままで保守費用が安くなる。また、ビジネスモデルがオートバックスと似ていることも大きかった。ディーラー車検がパッケージ製造元保守なら、オートバックス車検はリミニストリートの第三者保守のようなものだ」
Rimini Supportの導入と並行して、グループ内のIT関連組織の在り方そのものも見直した。オートバックスグループのデジタル子会社の歴史は、オートバックスセブンが2002年に翼システムとの共同出資で設立したバックスウィングシステムまで遡る。2006年には翼システムとの提携を解消して100%子会社化し、社名をオートバックスシステムソリューションに変更。さらに2009年には、戦略的なアウトソーシングの一環として富士通が85.1%の資本を持つ体制に変更し、社名はABシステムソリューションに。そして2023年、富士通との提携を解消して株式を買い戻し、自社で完全にITをコントロールできる100%子会社としてABDiが発足するという変遷をたどってきた。
ABDiの発足にあたっては、オートバックスセブン本体に分散していたIT・DX推進機能を全てABDiに集約し、発注者・受注者の垣根を完全に撤廃したという。同時に給与体系や教育体系も一新し、IT技術者を自社で育成する内製化に大きく舵を切った。これにより、情報システムの徹底的なコストマネジメントを行うとともに、そこで捻出したIT予算を自社主導で攻めのITに迅速に投資・実行しようとしている。
こうした取り組みの成果として、売上高5000億円達成に貢献するためのIT投資最適化が実現しつつあるという。例えばSAP ECC 6.0の標準保守が2027年に終了する「SAP 2027年問題」に対しては、リミニストリートとServiceNowが提携して提供する新しいソフトウェアモデルを採用することで、既存のERP基盤を変えずに基幹システムのモダナイゼーションを図る方針だ。「まずはやりやすいところから取り組む」(則末氏)方針の下、SAPのデータを基にServiceNowのワークフローシステム上で申請・承認が進み、承認結果がSAP上で更新される自動連携の仕組みを構築中だという。
さらに、生成AIツール「NotebookLM」を活用したデータドリブンな業績予測にも取り組んでいる。従来の業績管理は、各部門の責任者が「勘と経験」で算出した数字をExcelで集計した上で計画を作成していたという。現在はSAPのDWHである「SAP Business Warehouse」から抽出した実績データを基に、生成AIとの対話形式で業績の着地点を算出するオペレーションに刷新した。
リミニストリートは昨年、SAP ECC 6.0の保守期限を2040年まで延長すると発表している。則末氏は、「2040年まで保守が延長されるからこそ、ERPのリプレースを急がず、既存のERP基盤のデータを生かしてモダナイゼーションに取り組むことができる」と評価。Rimini Supportにより既存ERPの保守を長期的に継続できるようになったことで、限られたIT予算を攻めと守りのIT投資に効率的かつ効果的に振り分けられると見込む。