アパレルのオンワード樫山の「23区」は、全国の店舗間で在庫を移す業務に、フルカイテンの在庫分析クラウド「FULL KAITEN〈店間移動〉」を使っている。同社によると、店間移動1回当たりの創出粗利は、全サイズの移動を始める前と比べて平均2.7倍になった。本部が出した移動指示を店舗が実行した割合も、50%以下から90%に上がった。10月14日、フルカイテンが導入事例を公開した。
オンワード樫山の「23区」は、働く女性を主な顧客とするレディースブランドだ。固定客の比率が高く、定番商品が売上の中心を占める。色・サイズの展開が多いため品番数は膨大になる一方、1品番当たりの在庫数は少ない。そのため、倉庫からの補充だけでは店頭在庫を最適に保てる期間が短い。ある店舗では商品が余り、別の店舗では欠品する偏りが構造的に起きやすく、店間移動が欠かせない。品番数の多さで業務負荷が高く、全国規模での実施は長年の課題だった。
ディストリビューターの紺野充課長(23区販売戦略Div.販売第二Sec.)が、前任者から業務を引き継いだ時点では、本部主導の全国規模の移動はほぼできていなかった。七つの営業拠点で、各エリアの担当がエリア内だけで移動を指示しており、本部から全体が見えなかった。何を移すかの判断は属人的で、移動した結果の検証も難しく、効果を検証すると成果が出ていなかったこともあった。データの分析はExcelで、店舗とSKUごとに売上を予測し、在庫の過不足を出して優先順位をつけてマッチングさせていた。これには時間がかかり、毎日は計算し直せず更新はせいぜい週1回だった。
紺野氏は、エリア内だけの店間移動では限界があり、全国で実施しないと効果は出ないと考えた。売上のピークを過ぎた、最終消化に近い段階での移動をもっと早いタイミングに変え、最終的には誰でも同じ質でできる仕組みを作ることを目指した。
23区はFULL KAITENを東京エリアで先行導入し、成果を確認したうえで全国へ展開した。全国展開直後は、店舗がエリア外への在庫移動に慣れていなかったことから、移動指示に対する出荷実行率が50%以下にとどまった。そこで、隔週月曜日の営業開始前に指示を配信する運用を定着させ、店長会で移動後の販売実績を共有した。店舗側の設定や移動指示のタイミング・数量も見直し、出荷実行率は90%まで高まった。取り置き在庫を把握しにくい自社システム上の課題についても、フルカイテンと連携して対応した。
23区は2026年3月ごろ、全国で全サイズを対象に店間移動を始めた。その後の実績から、年間換算で上位1店舗分に近い成果を、新規出店のコストをかけずに見込めると紺野氏はみる。これは年間換算による試算値だ。移動リストの作成時間も大幅に短縮し、月曜の営業開始前に移動指示を出せるようになった。出荷側の店舗の作業負荷を踏まえ、実行可能な拠点数に絞って指示することも可能になった。店長からは、移動の判断が公平になったとの声も寄せられた。紺野氏は今後、粗利の拡大とアウトレットへの展開を進めたいとしている。