ソラストは、経理業務の効率化とガバナンス強化を目的に、エンタープライズ・ローコードプラットフォーム「intra-mart」を基盤とするバックオフィス業務向けアプリケーション「intra-mart Accel Kaiden!」を全社基盤として採用した。10月28日、これらの製品の提供元であるNTTデータ イントラマートが発表した。
事業ごとに異なっていた経費精算フローを統一し、約3万3000人超の従業員が利用する月平均4000人分の申請処理を効率化した。煩雑だった紙の証憑を前提としたアナログ作業を廃止し、経理部門の業務負荷を軽減するとともに、ソラストグループ全体への活用拡大を視野に入れ、さらなるユーザビリティの向上に取り組んでいく。
ソラストは1965年の創業以来、「医療」「介護」「こども(保育)」を三本柱として社会福祉領域で総合サービスを展開している。近年はデジタルテクノロジーを活用したサービス価値向上や社内業務の効率化に注力し、競争力強化を図っているが、事業ごとに異なる経費精算フローの非効率性が課題となっていた。
特に、全社員の大部分を占める専門職社員(約3万1500人)の経費精算フローは、紙の証憑を前提としたアナログ作業が多く、経理部門の大きな負担になっていた。たとえば、医療事業の専門職社員約2万5000人は、領収書などを台紙に貼り付けて本社経理部に郵送する方法で申請していた。介護・こども事業の専門職社員約6500人も小口現金での精算後、社内のワークフローシステム「ソラフロー」での申請とは別に、証憑を業務委託先に送付していた。
この結果、経理部では毎月平均約4000人分の申請に伴う大量の紙証憑の確認やExcelへの転記作業が発生し、休日出勤で対応する場合もあったほか、派遣社員や業務委託のリソースで対応していたためコストも膨らんでいた。また、現場責任者による確認プロセスが統一されていないなど、ガバナンス上の問題も抱えていた。旧システムでは、大規模利用時に割高な利用料やマスタ情報の手作業登録による煩雑さ、業務負荷とリスクの増大も懸念されていた。
複数のパブリッククラウド経費精算システムと比較検討した結果、intra-mart Accel Kaiden!の採用を決めた。採用の決め手は、既存システムとの親和性と連携のしやすさだ。既存のワークフローシステムであるソラフローが既にintra-martを基盤として稼働しており、人事システムから組織マスタや社員マスタを連携していたため、intra-mart Accel Kaiden!をソラフロー上のモジュールとして組み込むことで、マスタ情報の手作業による整備やメンテナンスが不要になるという期待があった。
また、コンピューティングリソースに応じた課金体系であるため、大規模な組織での利用時にコスト効率が良いと評価された。さらに、申請者に配慮された操作性とUI(ユーザーインターフェース)の分かりやすさ、既存のintra-martの仕組みに社員が慣れていたことから、導入のハードルが低いと判断された。将来の仕様変更にも迅速に対応できる持続可能な仕組みである点も、重要な評価ポイントとなった。
システム開発は、富士通Japanが業務要件整理を、サザンクロスシステムズが開発を担当し、プロジェクトを推進した。開発にあたっては、当初ウォーターフォール型で開始したが、要件定義の後半からはアジャイル的な開発手法にシフト。プロトタイプやモックアップを頻繁に提示してレビューを重ねることで、要件と完成機能のギャップを早期に発見し、迅速に改修を進めた。
システムの持続可能性を重視し、ビジネスルールに関する要件は「外付けのパターンマスタ」として分離。さらに、ローコード開発機能「IM-LogicDesigner」を活用して処理フローを定義し、アプリケーション本体を再展開せずにロジックの修正が可能な仕組みを整えた。
新たな経費精算システムは、2024年8月に本稼働を開始し、導入前の課題はほぼ解消された。導入効果として、まず専門職社員の経費精算に伴う紙証憑の処理プロセスがなくなったことで、経理部の業務負荷が軽減され、休日出勤が不要になっただけでなく、派遣社員や業務委託のコストもゼロになった。
人事システムとの連携によりマスタ情報を取得可能となり、従来手動で2~3日を要していた組織改編や人事異動時のマスタメンテナンスの手間も削減された。さらに、経費精算の申請・承認フローが全社で統一され、必ず上長が承認するフローになったほか、出張伺いなどの事前申請機能も搭載され、規定に沿った適切な手続きが確実に踏まれるようになり、ガバナンスも強化された。
全ての証憑が電子帳簿保存法に則った方法で管理でき、法令対応も実現している。申請者側のメリットとしては、個人のPCやスマートフォンから経費申請が可能となり、業務効率化につながった。加えて、申請に不備や不明点があった場合、システム上にコメントを残せるようになり関係者間のコミュニケーションが効率化され、問題解決までの時間も短縮できている。
管理本部経理部経理サポートグループグループ長の古里理人氏は、「全ての経費精算申請で、必ず上長が承認するフローにした。また、出張伺いや交際費使用伺いといった事前申請機能も搭載されており、規定に沿った適切な手続きが確実に踏まれるようになった。経理部にとっては、事前申請が漏れている経費について、申請者に都度確認するなどの作業もなくなった」と述べている。ソラストは今後、intra-mart Accel Kaiden!の活用をソラストグループ全体に拡大していくことを視野に入れている。