錦水館、クラウド会計で財務を可視化 データ経営で経常利益3倍に

2025年12月11日16:59|ニュースCaseHUB.News編集部
x
hatebu

 錦水館は、経営状況の可視化と迅速な意思決定を目的に、フリーのクラウド型会計ソフト「freee会計」を採用した。12月11日、フリーが発表した。導入により財務状況をリアルタイムに把握できる体制を構築し、コロナ禍での業績V字回復につなげた。今後はデータに基づく経営をさらに推進し、事業成長を目指す考えだ。

 広島県・宮島で創業120余年の歴史を持つ老舗旅館「錦水館」などを運営する同社は、2019年の事業承継直後にコロナ禍に直面。来島者の激減により毎月5000万円の資金が流出する危機的状況に陥った。資金繰りの対策を講じる上で、従来のオンプレミス型会計ソフトでは月次決算に1カ月以上の遅れが生じ、リアルタイムに経営状況を把握できないことが大きな課題となっていた。

 そこで、激変する環境下でスピーディーな経営判断を行うため、会計システムの刷新を決断。知人の経営者の勧めもあり、freee会計の導入を決めた。導入当初は従来の会計ソフトとの仕様の違いに戸惑う場面もあったが、税理士やサポートの支援を受けながら運用を定着させた。

 freee会計の導入により、財務状況の可視化と業務効率化が進んだ。従来は税理士や経理担当者に限定されていた会計情報を、経営層や幹部がリアルタイムに確認できるようになったことで、投資判断のスピードが向上。部門ごとの損益(P/L)も可視化され、幹部の経営に対する当事者意識も高まっている。経理業務においても、請求書作成機能の活用や入金ステータスの共有により、社内からの問い合わせが激減するなど生産性が向上した。

 同社ではfreee会計に加え、BIツールなどを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進している。データを基に飲食店メニューの絞り込みや業務自動化などを行った結果、コロナ前と比較して粗利益率は77%から85%へ改善し、経常利益は3倍に拡大したという。

 錦水館代表取締役の武内智弘氏は、「会計情報が『後から分かる結果』ではなく、『会社の意思決定のもとになる判断指標』に変わった。経営スタイルは時代に応じて柔軟に変えていくことが、私なりの事業承継だ。今後はDXをさらに推進し、顧客創造と業務効率の両立を図りたい」と話している。

ニュースリリース