創業80年の精密部品メーカー、三和ニードル・ベアリングは、30年以上稼働してきた基幹システムを、「SAP Cloud ERP」に刷新する。導入パートナーには、システムインテグレータを選んだ。これまで把握できていなかった実際原価と製造実績を可視化し、経営判断を支えるデータ基盤を整える。10月22日、システムインテグレータとSAPジャパンが発表した。
三和ニードル・ベアリングは、1946年の創業以来、マイクロシャフトやコロ(ニードルベアリング用の転動体)などの精密金属部品を製造し、自動車、産業機械、医療機器といった幅広い産業に供給する。EV関連部品、ヘルスケア、ロボティクスなどの成長分野にも事業を広げ、中国・福州の製造子会社を含む、グローバルな供給体制を築いた。中期経営計画で、基幹システムの刷新を重点施策の一つに位置づけており、今回の刷新は、システムの老朽化や障害への対応ではなく、事業の拡大を見据えた計画的な取り組みだ。
従来の基幹システムは、オフィスコンピュータ上に、スクラッチ開発で構築したものだ。長年、業務を支えてきた一方、生産計画や原価計算など、システムがカバーしていない領域は、個別対応に頼らざるを得なかった。見積の時点の原価は算出できても、実際にかかった原価を把握できず、月次の経営データの集計にも時間を要した。事業の拡大に伴い、経営判断に必要なデータを、速やかに得られる基盤の整備が課題になっていた。
コンサルティングファームと連携し、国内外の5社のERP製品を候補に選び、RFI(情報提供依頼)とRFP(提案依頼書)を経て、各社のデモンストレーションを比べた。「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」を中核とするSAP Cloud ERPを選んだ理由は、生産管理領域の対応力に加え、会計まで一貫してカバーする機能の網羅性だ。パートナーは、複数のSAPパートナーを比べ、コンサルティングファーム、導入パートナー、ユーザー企業が一体となってプロジェクトを進める体制と、その方針への共感を重視した。最終的には、業務をどこまで理解しようとするかというシステムインテグレータの姿勢と、ともにプロジェクトを進める体制づくりの考え方を評価した。
プロジェクトは、標準機能に業務を合わせる「Fit to Standard」のアプローチで、業務を再設計する。原価と製造実績が可視化されることで、製品別、顧客別、分野別の状況を把握し、経営判断のスピードを高めることを目指す。整備したデータ基盤の上で、AIの活用も進め、人にしかできない業務に、社員が集中できる環境を見据える。
上席執行役員の島田淳企画管理本部長(営業本部長を兼務)は、今回の取り組みを、足元の業務課題の解消にとどまらず、事業の成長を支える基盤への投資と位置づける。「まずは見えていなかったものを見える状態にすることで、現場に気づきが生まれ、それが行動につながっていくと考えている」と話す。