製造業向けのAIプラットフォームを手がけるキャディは、Workatoのエージェント型AI「Workato Genie」で、カスタマーサクセス(CS)部門の商談議事録作成を自動化した。従来約30分かかっていた作成作業をなくした。10月22日、Workatoが発表した。
キャディのCSチームは、複数の顧客を担当する中で、「お客様をどうサクセスに導くか」というプランに向き合う時間を増やしたいと考えていた。実際には、議事録の作成、情報収集、社内報告といった事務作業に、多くの時間が割かれていた。約1年半、CRMや専用ツールを使ってきたが、機能していたのは、顧客接点のログを記録する範囲にとどまり、そこから示唆を導く使い方には至っていなかった。議事録は属人化しやすく、データもCRMとクラウドDWHに分散していた。従来ツールの契約更新を見据え、単なる置き換えではなく、CSがお客様と向き合う時間と価値を最大にする「インサイト基盤」を、ゼロベースで再設計する方針を決めた。
出発点は、現場の業務効率化に、すでに使っていたWorkatoのレシピだった。社内では多数のレシピが本番稼働しており、Genieの研修を受けた時期も重なって、AIエージェントと既存システムの連携を、1つのプラットフォームで完結できる点が、決め手になった。特に評価したのは、「Workato Enterprise MCP」だ。グループ単位でアクセスの範囲を絞り、該当するエンドユーザーだけが使える認証の仕組みが、機密性の高い顧客データを扱う、同社の必須要件を満たした。正式リリース前の新機能を、先行して使える「デザインパートナー」プログラムも、後押しになった。
取り組みは二つある。一つ目は、Workatoのデータ分析用MCP「Data MCP」のPoCだ。WorkatoのFDE(Forward Deployed Engineer)チームの支援のもと、CSデータをクラウドDWHに集約。自然言語で質問すると、DWH上の顧客データにSQLクエリを実行し、検索・集計結果を回答する仕組みを、約1.5カ月で最小構成として構築した。従来のCS管理ツールの代わりになる可能性も確認した。二つ目は、商談議事録生成Genie「Reco」の構築と改善だ。当初は、指示文の肥大化で、精度の低下や処理エラーが頻発したが、WorkatoのGEARSフレームワークに沿って、ナレッジベースを活用する形に再設計し、意図しない出力をほぼなくした。保守運用を支える仕組みも整え、非エンジニアでも引き継げる体制にした。
議事録の作成時間は、約30分からゼロになり、生まれた時間は、顧客のビジネスゴールから逆算した、アカウントプランニングに充てている。Reco関連のGenieは、月間で延べ数万件規模の会話と処理を担うまでに、利用が広がった。
カスタマーサクセス企画部の前田利基氏は、グループでスコープを絞ると、そのグループのエンドユーザーしか使えない仕組みは、「非常に安心して開放できる」と話し、競争力に関わる機密データを扱う同社には、必須要件だったと説明する。カスタマーサクセスオペレーションの岩本宇未氏は、システムを可視化しやすく、ドキュメントを整えておけば、コードを書けない人でも、分岐や処理の流れを、目で見て理解できる点を評価する。
AIによる新しい指標は、半年以上にわたり、メンバーの評価にも使われている。今後は、顧客との対話内容を時系列で構造化し、評価軸に基づくアカウントプランの作成まで、一気通貫で行う「System of Engagement」への発展を目指し、他部門への展開も見据える。