関西電力は、全社約4万人を対象にZoom Communicationsのコラボレーションプラットフォーム「Zoom Workplace」を導入した。Zoom Workplaceの提供するZVC JAPANが10月9日に発表した。コロナ禍で急増した在宅勤務に対応し、時間や場所の制約を受けない円滑なコミュニケーション環境を実現した。加えて、ID連携によるライセンス付与の自動化を進め、年間300時間もの業務時間削減につなげている。
関西電力は1951年の発足以来、エネルギー供給事業を担い、現在はエネルギー事業、送配電事業、情報通信事業、生活・ビジネスソリューション事業の四つを中核とする事業を展開している。近年は時間や場所に制約されない働き方「デジタルワークスタイル(DWS)」を推進し、発電所などの現場と本社オフィスとの遠隔コミュニケーションの効率化を図ってきた。
こうした取り組みを進めるにあたり、同社は以前から別のオンプレミスビデオ会議システムを利用していたが、コロナ禍で在宅勤務が急増したことで同時利用できるユーザー数の上限が課題となった。そこで緊急的に無償版のZoom Meetingsを導入したが、時間制限やオンライン研修・ウェビナーでの利用希望が増えたため、有償版の検討を開始した。
有償版導入に際し他社製品と比較検討した結果、ネットワーク帯域制御が細かく行える点や、映像・画像を共有しやすい点でZoomが高く評価された。第三者認証や暗号化など、セキュリティ面でも社内基準を満たしていた。また、すでに無償版で従業員が使い慣れていたことから、導入がスムーズに進むと見込まれたことも有償版への移行を決めた理由の一つだ。今回の導入は野村総合研究所の協力のもとで進められ、2023年に全社約4万人への大規模導入が完了した。
有償版のZoom Meetingsへの移行により、ビデオ会議の時間制約がなくなり、利便性が向上した。従業員に実施したアンケートでは92%がZoomに満足していると回答している。また、ウェビナーやオンライン研修の実施も容易になり、動画保管・配信サービスと併用することで、参加できなかった社員も録画を視聴できるようになった。IT戦略室 業務改革推進グループ マネジャーの杉浦一成氏は、在宅はもちろん移動中にも気軽にコミュニケーションが取れるようになったことは大きな効果だと話している。
さらに、オフィスにいる従業員が一か所に集まって会議をしたいとのニーズに応えるため、一部の会議室に据え置き型のテレビ会議端末に加え、手軽に導入できるZoom Roomsも併用している。特に火力部門からの要望を受け、発電所の現場と本社のオフィスを常時接続して即座に連絡を取れるよう、執務室内にZoom Rooms環境を構築、常時接続を実現した。このユースケースを受け、社内他部門からも導入の相談が寄せられている。
大規模な導入に伴い、当初はZoomアカウント管理に課題が生じたが、2025年3月に新しいID連携の仕組みを構築したことでそれを解消している。人事データと紐づくID管理のデータベースが変更されるとZoomのライセンスも自動的に反映される仕組みが整った。また、業務委託先へのライセンス付与についても、申請・承認のワークフローシステムを構築し、承認完了後に自動付与される仕組みを実現した。これにより、ライセンス付与に関する個別対応業務が年間で約300時間削減されるなど、効率化を達成した。
今後、関西電力はZoom Meetingsのミーティング要約機能やホワイトボード機能など、現在利用可能な機能を最大限に活用していく方針だ。また、クラウドPBXである「Zoom Phone」を社内電話として活用すべく導入準備を進めている。業務改革推進グループの竹内満紀氏は、Zoom PhoneはZoom Meetingsへの切り替えがスムーズな点や、通話内容のリアルタイム文字起こし機能など、業務効率化だけでなくコミュニケーションの質の向上や利用者のUX(ユーザー体験)向上に大きな可能性があると期待しているとコメントした。IT戦略室 情報通信技術グループ マネジャーの小野田哲也氏は、セキュリティ面で社内基準を満たしており、Zoomを高く評価していると語っている。