屋久島観光協会は、アークエッジ・スペースと共同で、山岳整備業務の現場記録と報告書作成を支援するアプリケーションを開発し、2026年8月1日に運用を開始した。アークエッジ・スペースが10月1日に発表した。登山道の整備や山小屋・トイレの清掃の内容、写真、位置情報をスマートフォンで記録できる。9月末時点で、アプリを活用した定期報告書の作成は54件となった。蓄積した情報は、今後の維持管理や自然保全に生かす。
世界自然遺産「屋久島」を擁する鹿児島県屋久島町では、安全な登山環境と豊かな自然を維持・保全するため、屋久島観光協会や屋久島山岳ガイド連盟などの関係者が、登山道の補修、倒木への対応、山小屋・トイレの清掃といった維持管理を担っている。
こうした業務では、現場で撮影した写真、作業場所、作業内容を整理し、作業後に行政へ報告する必要がある。山中で収集した写真や位置情報を作業後に整理することは現場作業者の負担となり、協会側でも報告書の作成に時間を要していた。
両者が共同開発したアプリケーションでは、作業者がスマートフォンを使い、作業内容や写真を位置情報と紐付けて登録できる。倒木や崩落、施設の破損など、登山道上で確認した異常や修理が必要な地点も、写真やコメントとともに記録する。携帯電話の回線が届かない山中での利用を想定し、オフラインでの記録にも対応した。現場で記録したデータは下山後にアップロードでき、登録した写真、位置情報、作業内容を基に報告書を作成する。
記録した情報は地図上で蓄積・共有できる。過去の情報を参照しやすくなることで、同じ地点で繰り返し発生する問題の把握や、整備が必要な箇所の優先順位の検討など、今後の維持管理計画にも活用する。
2026年9月末時点で、アプリを活用した定期報告書の作成は54件、登山道上の点検・要対応箇所の登録は82件となった。9月上旬に屋久島で発生した記録的な豪雨の際には、登山道への影響や被害状況を現地で記録・共有する調査にも利用した。
アークエッジ・スペースは、宇宙・地上で得られるデータをつなぎ、地域や産業の課題解決を支援する地理空間情報プラットフォーム「ArkEdge Insights」を展開する。今回のアプリケーションは同プラットフォームの共通基盤を活用したもの。同社は、共通基盤とその上で稼働するアプリケーションを通じ、現場業務や意思決定を支援しており、パラグアイ、ブラジル、静岡県などでも提供を始めている。
今後は、現場で蓄積する情報と衛星画像などの地理空間情報を組み合わせ、屋久島の自然環境や変化をより広域的に把握する取り組みを検討する。蓄積した情報を基に、登山道や山岳施設の状況を観光客に分かりやすく発信することも検討している。
屋久島観光協会の岩川卓誉事務局長は、「作業後の写真整理や、管理者である行政への報告書作成には多くの時間を要していた。アプリにより、電波の届かない山中でも作業内容を記録し、位置情報や写真を円滑に共有できるようになった。報告に必要な写真の撮り忘れも起こりにくくなる。現場の負担を軽減し、蓄積した情報を今後の登山道整備や自然保全に生かしていく」と話している。