坂出市、公共交通改革で利用者6000人増 市の補助額は6割削減

2025年7月29日11:39|ニュースCaseHUB.News編集部
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 香川県坂出市は、ユニ・トランドのデジタル基盤「Community MaaS」を活用し、地域公共交通の活性化に取り組んでいる。7月29日、ユニ・トランドが発表した。マイナンバーカードと連携した市民割引やゾーン制運賃の導入、路線の再編などを通じて公共交通の年間利用者は約6000人増加。循環バスにおける市の補助額を約60%削減するなど、市民の利便性向上と行政負担の軽減を両立させている。

 坂出市は2023年度に「坂出市地域公共交通利便増進実施計画」を策定し、持続可能な公共交通網の構築に取り組んできた。従来、市内の公共交通は、路線バスが距離に応じて運賃が変わる距離制、循環バスやデマンドタクシーは均一運賃と、複数の運賃体系が混在し、分かりにくさが課題となっていた。また、一部路線の非効率な運行も問題視されていた。

 こうした課題を解決するため、市はキャッシュレス決済やデータ分析の仕組みなどをパッケージ化したサービスであるCommunity MaaSをシステム基盤として採用。地域の乗合交通全体の運賃を、生活圏に応じて料金が変わる「ゾーン制運賃」に統一した。さらに、キャッシュレス決済システムとマイナンバーカードを連携させ、坂出市民であれば一乗車あたり100円の割引を受けられる仕組みを構築。これは、国の「デジタル田園都市国家構想交付金」の対象事業にも採択された先進的な取り組みだ。

 施策の結果、運行の効率化が進んだ。非効率だった循環バスの3ルートを、病院や商業施設へのアクセス性を確保した上で2ルートに再編。運行間隔を1時間ごとのパターンダイヤとすることで、年間運行便数は42%、運行経費は約25%削減できた。

 一方で公共交通全体の年間利用者数は約6000人増加した。特に路線バスの需要増は顕著だ。従来は安価だった循環バスに中心部での移動需要が集中していたが、運賃体系の統一により路線バスにも分散した形だ。路線バスの年間利用者数は約1万3000人増加し、循環バスの減便に伴う利用者減(約1万1000人)を上回る結果となった。

 こうした運行効率化と利用者増による運賃収入の増加に加え、国の補助制度の特例措置が適用されたことで、市の財政負担は大幅に軽減。市が運行を支援する路線全体の補助額は前年比で約18%(約2000万円)減少し、特に循環バス単体では市の補助額が約60%削減された。

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ゾーン制運賃と市民割引の導入で年間6,000人の利用者増

 坂出市役所の亀井大聡氏(政策部 政策課 公共交通係 主事)は、「ユニ・トランドが提供するキャッシュレス決済とマイナンバーカード連携による市民割機能の見通しが立ったことで、『ゾーン制運賃』と『市民割』という新しい仕組みを考え出すことができた。利用者減少で赤字が増え、サービスを低下させるという負のスパイラルから脱却し、利用促進で収支を改善させる好循環へ転換できた」と語る。

 市はほかにも、運転免許証を自主返納した高齢者向けのプリペイドチケット交付や、中高生限定の乗り放題パス販売など、多様な利用者支援策を展開している。今後は、市民に公共交通を「自分事」として捉えてもらうためのPR施策に注力するとともに、全国的に深刻化するバス乗務員不足といった課題に対し、DXなどを活用しながら持続可能な公共交通のあり方を探っていく考えだ。

ニュースリリース


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