神奈川県、救急電話相談「#7119」の基盤刷新 判定標準化とデータ活用で医療負担を軽減

2025年10月27日21:30|ニュースCaseHUB.News編集部
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 神奈川県は、救急電話相談「#7119」のコンタクトセンター基盤として、Salesforceの公共機関向けプラットフォーム「Agentforce Public Sector」を採用した。10月27日、セールスフォース・ジャパンが発表した。新システムにより、オペレーターによる救急緊急度判定の標準化と相談内容のデータ化を実現し、年間約42万件以上の問い合わせに対応可能な体制を構築、行政救急「119」への不要不急の入電抑制を目指す。将来的には、AIを活用してオペレーターの判断を支援し、県民の利便性向上につなげたい考えだ。

 人口約920万人の大規模自治体である神奈川県は、DX推進を通じて医療サービスの質と持続可能性の両立を目指している。近年、軽症での救急医療機関の受診や、緊急性の低い「119」への入電が増加し、医療現場の負担が深刻化していた。この状況に対応するため、同県は看護師等が24時間365日体制で相談を受ける救急電話相談「#7119」を全県で展開することを決定し、2024年11月より運用を開始した。

 今回導入されたシステムでは、Salesforce上でオペレーターが質問に沿って入力するだけで救急緊急度が表示される画面を実装している。これにより、オペレーターは迷うことなく迅速に救急緊急度を判定できる。また、ベテランによる適切な判定やアドバイスをナレッジとしてデータ化し、蓄積することも可能だ。このナレッジは、要因分析を通じて客観的に可視化され、経験の浅いオペレーターとも共有できる。

 さらに、厚生労働省の公開する医療機関の基礎データ(ナビイ)と県が持つ当番輪番情報などのデータを組み合わせることで、病院の受け入れ状況をよりきめ細かく案内に活用できるようになった。

 Salesforceの基盤では、電話、LINE、Webを一つの基盤で扱えるため、通話やチャットなどすべての相談データを統合データプラットフォーム「Data 360」に集約し、分析プラットフォーム「Tableau」で活用できる。画面や判定フローをノーコード/ローコードで迅速に更新できる点も特長で、運用を止めずに最新の状況に合わせられる。

 同県は、2025年11月7日に、オペレーターが使用する救急緊急度判定画面や医療機関案内などの機能を県民が直接使えるようにWeb化し、Web画面とLINEを連携させることで、「誰にでも使いやすいシステム」を実現する計画だ。

 神奈川県 健康医療局 保健医療部 医療企画課 健康医療DXグループの佐々木元氏は、Salesforceを採用した理由について、「求める機能が網羅された『オールインワン』のプラットフォームだ。既存のCRM基盤に必要な機能を積み上げるだけで、現場に耐えうるシステムを早期に実現できる。この柔軟性と完成度の高さが、Salesforceを選んだ最大の理由だ」と述べている。

 また、佐々木氏は今後の展望として、「今後はAgentforceの活用により、オペレーターの判断を支援し、県民の利便性を向上することで、より安全で適切な受診行動を後押ししていくという未来も検討していきたい」と語っている。

ニュースリリース