山崎製パンは、DX推進を目的とした内製開発体制の確立に向け、住友電工情報システムのローコード開発基盤「楽々Framework3」を採用した。12月17日、住友電工情報システムが発表した。外部ベンダーに依存しない開発体制を整備したことで、老朽化したシステムの刷新コストを大幅に抑制したほか、現場の業務効率化においても大きな成果を上げている。
山崎製パンは、パンや和洋菓子の製造販売を中心に、全国に製造工場と10万カ所以上の販売チャネルを持つ。同社は2022年5月、部門横断による「内製開発強化プロジェクト」を始動した。背景には、特定の外部ベンダーへの依存からの脱却と、自社で柔軟にシステムを構築・修正できる体制を整えることで、全社的なDXを加速させたいという狙いがあった。
開発ツールの選定にあたり、プログラミングを最小限に抑えられることや、初心者でも扱いやすい操作性、費用対効果を重視した。過去に高機能なツールが定着しなかった経験から、誰でも理解しやすい明快なインターフェースを求めた結果、すべての評価項目で他製品を上回った楽々Framework3の導入を決めた。
導入後は、わずか3名のチーム体制で老朽化したJavaシステムのリプレイスを自社内で完結させた。既存のデータベースから定義情報を自動生成する機能を活用することで開発工数を大幅に削減。外部委託した場合には約2000万円かかると試算されていた開発コストを約300万円に抑え、85%に相当する1700万円のコスト削減を実現した。
また、現場の利便性向上を目的とした「アルバイトシフト申請システム」も内製で開発した。幅広い年齢層がスマートフォンで直感的に操作できるよう画面設計を工夫した結果、紙や電話による従来の申請フローが不要になった。これにより、1工場あたり月間約93時間の業務時間を削減するなど、人事担当者の事務負担軽減に大きく寄与している。
現在は複数のシステム開発が進行しており、今後はこれらの成功事例を全国の拠点へ順次拡大していく方針だ。高度なスキルを要さずに柔軟なシステム開発が可能な基盤を強みに、さらなる業務変革を推進する。
プロジェクトに参画した計算センターシステム開発課の薬師川靖氏は、「領域ごとにチームを組成し、標準ツールの選定や教育カリキュラムの整備を進めてきたとした上で、効率的な内製開発体制の確立に向けて動いてきた」と話している。また、同課の堤龍矢氏は、「高度なスキルがなくとも理想のシステムを実現できる点は製品の大きな強みである」とし、今後は内製開発のノウハウを蓄積しながら活用範囲を広げていきたい考えだ。