トラスコ中山は、人事異動の意思決定プロセスを高速化するため、富士通のデータ基盤「Fujitsu Data Intelligence PaaS」を採用し、数理最適化モデルを活用した人事異動支援アプリケーションを構築した。5月20日、富士通が発表した。膨大な組み合わせの中から条件を満たす人材の配置案を導き出すことで、人事異動案作成にかかる工数を約98%削減した。定量データとAIとの対話を組み合わせ、従業員の成長を促す戦略的人事異動の推進を目指す。
トラスコ中山は、プロツール(工場用副資材)の卸売業を展開する企業だ。同社では1回の人事異動においておよそ100人規模の配置を検討することもあり、その組み合わせは10の158乗通りにも及んでいた。これまで人事担当者は、従業員の所属年数や職種経験、評価、個別事情など多角的な要素を考慮しながら手作業で配置案を作成しており、多大な時間と労力がかかることが課題となっていた。
こうした背景から同社は、データを起点として迅速な意思決定を行うため、富士通のデータ基盤を採用した。選定にあたっては、富士通が提唱する「Fujitsu Data Excellence」手法に基づく共創型アプローチが評価された。富士通のデータサイエンティストがトラスコ中山の現場に深く入り込み、人事データや業務プロセスの現状を分析した上で、同社独自の人事要件を組み込んだ専用のアプリケーションの開発を進めた。
今回構築したシステムでは、所属年数などの項目を定量的な判断軸として入力条件に設定する。その上で、富士通が独自に開発した数理最適化モデルを用い、膨大な組み合わせの中から適切な配置案を高速に導き出す。これにより、従来に比べて異動案の作成工数削減に成功した。
さらに、人事担当者が日常的に重視してきた複雑な判断基準を整理し、AIチャット機能を構築した。人事担当者は、数理最適化モデルが作成した配置案に対し、網羅的な視点で考慮ができているかをAIとの対話を通じて確認できる。これにより、定量データだけでは十分に反映しきれない従業員のキャリア志向や、配置による周囲への影響といった定性的な要素についても、AIから得られる示唆を参考にしながら最終的な判断を下せる環境を整えた。
今回のシステム導入により、人事担当者はデータに基づく高速な初期案をもとに、より深い検討に時間を割くことが可能になった。定量的なデータによる効率化と、AIとの対話を通じた定性的な配慮を組み合わせることで、客観性と納得感の高い人事異動の意思決定プロセスを実現している。
トラスコ中山は今後、本アプリケーションを継続的に活用し、自社独自の制度や取り組みに沿った戦略的人事異動をさらに加速させる。従業員一人ひとりの成長と、事業の持続的な発展を両立させる人材戦略の仕組みづくりを推進していく。