石川県輪島市は、クラウドサービスの利用拡大に伴う認証負荷の軽減と、災害時の事業継続性強化を目的に、A10ネットワークスの統合型セキュリティアプライアンス「A10 Thunder CFW」を採用した。12月23日、A10ネットワークスが発表した。庁内ネットワークにおいて、特定のクラウド通信を直接インターネットへ逃がすローカルブレイクアウトを実現。2024年に発生した能登半島地震の復興支援にあたる応援職員を含め、500名を超える職員がセキュアかつ高速にクラウドへアクセスできる環境を構築した。
輪島市では、広報や観光向けの動画制作に活用するAdobe Creative Cloudのほか、全庁展開を予定しているMicrosoft 365など、クラウドサービスの利用が増加していた。しかし、三層分離を採用している従来の庁内ネットワーク環境では、端末ごとの個別認証や手動によるアップデート作業が情報システム部門や職員の大きな負担となっていた。また、オンライン申請など住民サービスのデジタル化を進める上で、LGWAN環境の端末から安全にクラウドを利用できる仕組みが求められていた。
A10 Thunder CFWの採用にあたっては、自治体分野での豊富な導入実績に加え、市内のGIGAスクール構想において同製品の運用経験があり、高い信頼性とコストパフォーマンスを備えている点を評価した。
導入により、三層分離の構成を維持しながら、クラウドアクセスに特化した経路制御を実装した。これにより、Windowsのライセンス認証やソフトウェアの更新作業が自動化され、業務効率が大幅に向上した。特に、能登半島地震やその後の豪雨災害からの復興に際しては、急増した応援職員向けのデバイス整備に大きな効果を発揮した。Microsoft Officeをサブスクリプション化し、ローカルブレイクアウト経由で必要な環境を迅速に提供することで、変化する現場のニーズに柔軟に対応できている。
また、被災直後にLGWANの接続系統が物理的に遮断された際も、インターネット接続が可能な端末を活用することで、石川県や周辺自治体との連絡を継続できた。この経験から、輪島市は災害時の事業継続(BCP)の観点でも、ローカルブレイクアウトによる通信の冗長化が重要であると再認識した。
今後は、庁舎内で運用しているファイルサーバーなどのクラウドストレージ移行を進め、IP制限を組み合わせた安全なアクセス環境の構築を目指す。また、Web会議ツールを活用した保守事業者との連携強化や、画面共有による住民支援サービスの拡充も検討している。
輪島市は、石川県が推進するネットワーク分離モデルの移行も見据え、LGWAN端末からのクラウド活用という行政現場のニーズに応えるべく、A10 Thunder CFWの活用領域をさらに広げていく方針だ。