パナソニックは、コンタクトセンターに寄せられる膨大な顧客の声(VoC)を分析し、顧客理解を深化させるための新たな仕組みを構築した。システム基盤として、Google Cloudの生成AIプラットフォーム「Vertex AI」やナレッジグラフ技術を採用した。2月5日、Google Cloud Japanが発表した。従来は初期仮説の形成までに数カ月を要していたリサーチ工程を数日単位に短縮し、生活者の真意に基づいた迅速なマーケティング施策の立案につなげる。
日本国内の家電マーケティングを担うパナソニックのコンシューマーマーケティングジャパン本部は、顧客との長期的な関係構築を目指し、コールセンターに週あたり十数万件規模で蓄積されるVoCの活用を推進している。しかし、情報の多くが自由記述形式であるため、必要な情報の探索や背景の読み解きに多大な負荷がかかり、実調査の企画までに2カ月から3カ月を要するケースがあるなど、活用の非効率性が課題となっていた。
こうした課題に対し同本部は、VoCから抽出した行動傾向や価値観をもとに生成AIが代表的な顧客像を再構成する「AIペルソナ」を用いたバーチャルリサーチを導入した。AIペルソナと対話することで、一見単純な不満の背後に潜む文脈や切実な困りごとを短時間で把握可能となった。初期仮説の到達までにかかっていた期間は、数時間から数日にまで短縮されている。
AIペルソナの精度を支える基盤には、ナレッジグラフを活用した。Cloud Storageに保存されたVoCの要約情報を「Gemini」によって構造化し、データベースサービス「Spanner」上でグラフ構造として再構築している。出来事や感情、背景、意図を意味単位で結びつけることで、特定の条件に紐づいた発言を文脈ごとに引用可能にした。さらに、バーチャルインタビューで得られた新たな気づきをグラフに書き戻すことで、顧客理解の土台を継続的に更新する構造を整えた。
システムの運用面では、Webアプリケーションの実行環境に「Cloud Run」を、データの保存に「AlloyDB」を採用し、社内ユーザーが手軽に利用できる環境を構築した。これにより、従来は多額の費用と時間を要していたリサーチを、日常業務の延長として安価かつ迅速に実行できるようになった。
パナソニックコンシューマーマーケティングジャパン本部の若松氏は、「バーチャルリサーチの導入により、誰もが短期間で顧客理解の7合目に到達し、次のアクションを後押しできるようになった。今後はサードパーティーデータの取り込みによる生活者像の立体化などを進め、顧客に寄り添う視点からくらしの質を豊かにするビジョンを実現していきたい」としている。