東北大学病院が、医師の働き方改革に向けて大規模言語モデル(LLM)を活用した医療文書の自動作成システムを導入したことを2023年12月8日、日本電気(NEC)が発表した。同システムにより、医療文書の作成時間が平均47%削減され、業務効率化の可能性が確認された。
少子高齢化による労働力減少が進む中、医療現場でも人手不足が深刻化していることから、医療業務の効率化が喫緊の課題となっている中、東北大学病院は、医師の時間外労働の主な原因の一つである「記録・報告書作成や書類の整理」に取り組んだ。
同院はNECと共同で、医療業務向けにチューニングしたLLMを活用した医療文書作成支援システムの実証実験を2023年10月から11月にかけて実施した。
システムは、NECが開発した医療テキスト分析AIを用いて電子カルテの情報を時系列に整理し、LLMで治療経過の要約文章を自動生成する。生成された要約文章は、元の電子カルテの記載内容と関連付けて表示されるため、医師が効率的にエビデンスを確認できる。
実証実験は東北大学病院の一部診療科の医師10名の協力を得て行われた。その結果、紹介状や退院サマリなどの要約文章作成時間が平均47%削減された。また、生成された文章の表現や正確性についても高評価を得た。
東北大学病院の関係者は「本システムにより、医師は膨大な電子カルテの記録から必要な情報収集作業を大幅に軽減でき、効率的に文書作成が可能になると期待している」と述べた。
一方、橋本市民病院でも同様の実証実験が2023年10月から開始されている。同院ではNECの電子カルテシステム「MegaOak/iS」を使用しており、匿名化された電子カルテ情報をクラウド上のLLMに安全にシームレスに連携させる仕組みを構築。「MegaOak Cloud Gateway」を介して、個人情報保護に配慮しつつ要約文章を生成する取り組みを進めている。
実証実験では、要約文章の精度向上や長期治療経過の要約生成、操作性の向上などを目指している。電子カルテ画面上に「LLM」ボタンを新設し、クリックだけで要約文章を自動生成する機能の実装も予定されている。
NECは今後、LLMと音声認識を組み合わせた医療文章作成支援や、症状詳記などの医療文書自動作成に関する実証も計画している。
ニュースリリースURL
https://jpn.nec.com/press/202312/20231213_01.html