日産自動車、作業分析AIで組立工程を可視化 技能伝承を加速し作業改善を促進

2025年8月5日10:22|ニュースCaseHUB.News編集部
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 日産自動車は、完成車両組立工程における作業分析の効率化と作業習熟の迅速化を目的に、作業分析AIソフトウェア「Ollo Factory」を採用した。8月5日、Ollo Factoryを提供するOlloが発表した。ウェアラブルカメラの活用により、これまで困難だった組立工程での詳細な作業分析が可能になった。ベテランと新人の作業比較などを通じて、技能伝承の迅速化や工場全体の競争力向上につなげる。

 日産自動車では生産性向上の取り組みの一環として、AIを活用した作業分析の導入を検討していた。特に完成車両組立工程では、作業員が車体の下や内部に入るなど、作業範囲が広く動きも複雑なため、従来の固定カメラによる分析では死角が多く、詳細なデータ取得が困難という課題があった。また、作業員の入れ替わりが多い状況下で、効率的な作業分析と早期の技能習熟が重要になっていた。

 こうした背景から、2024年秋にOllo Factoryの検討を開始し、完成車両組立工程での実証実験を行った。実験では、作業員がウェアラブルカメラを装着して撮影した一人称視点の動画をOllo Factoryで分析。これにより、固定カメラでは捉えきれなかった作業も正確に分析できることが実証され、正式採用に至った。

 Ollo Factoryの採用にあたり、複数の機能が評価された。撮影した動画からAIが要素作業ごとに自動で分割し、複数サイクルの動画を要素作業単位で同期させて比較できる機能により、作業のばらつきや無駄な動作を容易に特定できる。また、ベテラン作業員と新人作業員の動作の違いを可視化することで、習熟度に応じた最適な教育プログラムの策定が可能になる点も決め手となった。

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Ollo Factoryによる動画分析の様子

 今回のシステム導入により、日産自動車は作業員の習熟速度の向上や育成時間の短縮を見込んでいる。さらに、作業のムリやムダを定量的に分析し、迅速な改善につなげることで、現場全体の作業効率を高め、工場の競争力向上や円滑な新車立ち上げに寄与することを期待している。

 日産自動車 生産企画統括本部モノづくり革新部部長の林哲哉氏は、「Ollo Factoryの導入は、特に手元が検出しづらい組立ラインにおけるAI分析の課題を解決する大きな一歩だ。これまで難しかった作業分析が可能になり、私たちの生産現場における作業の可視化と改善が進むことを期待している」とコメントしている。

ニュースリリース