茨城県庁は、結核や鳥インフルエンザなどの感染症対応の運用標準化を目的に、サイボウズの業務改善プラットフォーム「kintone」を導入した。システム開発の知見と自治体向けパッケージ「ジチタイ39」のノウハウを持つジョイゾーが、kintoneをベースとした開発を支援した。10月22日、ジョイゾーが発表した。消毒ポイント情報の即時公開や消毒済証明書の電子発行により、問い合わせや紙の補充を削減し、職員の事務負担軽減を図る仕組みを構築した。今後は他の感染症対応への横展開や、職員のkintone人材育成を進める。
今回システムが導入されたのは、保健医療部疾病対策課と農林水産部畜産課の二部門だ。従来、結核患者の管理業務では、国の感染症発生動向調査(NESID)のCSVをExcelマクロで加工し、通知書類を手作業で発送していたため、操作に不慣れな職員による入力・発送ミスが発生していた。また、鳥インフルエンザ発生時の消毒ポイント情報は、PDFを作成しWebに掲載していたため、情報更新に時間がかかり運搬業者からの確認電話増加や誤った地点への誘導につながっていた。さらに、消毒済証明書は紙で発行しており、紙の配布や補充のために職員が現場へ赴く必要があり、運用コストが大きかった。
これらの課題を解決するために、県庁の情報システム課DX推進グループが中心となって進める全庁的なデジタル化の一環として、ジョイゾーの支援のもとkintone導入に至った。ジョイゾーは自治体業務に精通した元自治体職員とkintone開発の知見を合わせ持つことによる迅速な実装と、現場に即した対応力が評価された。開発にあたっては、行政では一般的ではない準委任契約を採用し、現場の要望を反映しながらアジャイルに開発を進めた。
導入されたシステムは「結核感染症患者管理」「鳥インフルエンザ消毒ポイント管理」「鳥インフルエンザの消毒済証明書発行」の三つである。
結核患者管理では、kintoneの直感的なインターフェースにより入力ミスが減少し、帳票出力サービス「PrintCreator」と連携することで必要な帳票を即座に出力できるため、各種書類の作成・発送作業がスムーズになった。
鳥インフルエンザ対応では、kintoneに消毒ポイント情報を登録するだけで、「kViewer」を通じてリアルタイムにWeb公開される仕組みに変わり、運搬業者からの問い合わせ電話や誘導トラブルが解消された。消毒済証明書も電子化され、現場でのスマートフォンからの入力で即座に電子データとして発行可能になり、紙の配布・補充作業が不要になった。これにより、感染症発生時の過酷な業務環境において、業務のスピードと品質向上、職員の負担大幅軽減が実現した。
茨城県庁は、kintone導入の結果について「感染症発生時の緊急対応において業務の効率・品質が改善され、職員の負担も大幅に軽減された」としている。
現在の運用状況としては、三つのアプリが稼働しており、「RunBook」というマニュアル作成サービスを活用することで、職員のITリテラシーのばらつきに関わらず使いやすいヘルプ機能を整備している。また、人事異動で担当者が変わっても、クラウド上に検索されやすい形でデータが蓄積されるため、組織としての知見が継承される体制に期待している。
茨城県庁は、ジョイゾーの選定ポイントとして、他のベンダーと比較して圧倒的にレスポンスが早かった点を挙げている。加えて、担当エンジニアが自治体勤務経験を持ち、行政の業務フローや調達プロセスを熟知していたため、スムーズなコミュニケーションが可能であったことを評価した。今後は、今回開発した仕組みをコロナなどの他の感染症対応へ横展開する計画だ。