カプコンは、ゲームタイトル群を支えるバックエンドシステム「カプコン共通基盤」に、システムのパフォーマンス可視化と運用の効率化を目的として、New Relicのオブザーバビリティプラットフォーム「New Relic」を導入した。10月21日、New Relicが発表した。システム全体の包括的な可視化により、課題への対応・改善が迅速化・効率化され、障害対応時間を平均1時間短縮する効果に貢献している。今後は、さらなる共通基盤の拡充と、AI機能の活用による運用負荷の軽減を目指す。
カプコンは、創業以来「バイオハザード」や「モンスターハンター」などのヒット作を創出するゲームエンターテインメントのリーディングカンパニーである。同社は複数のプラットフォームで展開されるゲームタイトル群に対し、共通機能やデータを提供するバックエンドシステムとして共通基盤を2020年夏から運用している。共通基盤は「アカウント管理」「プロフィール管理」「ゲーム内通貨・DLC管理」などの五つのシステムで構成され、複数のタイトルが利用するため、24時間365日の安定稼働が不可欠だ。
共通基盤の安定稼働には、インフラに加えアプリケーションやデータベースの状態も併せて可視化し、異常を速やかに検知できるオブザーバビリティプラットフォームの導入が有効なアプローチと判断された。同社は、共通基盤の開発プロジェクト始動と同時にNew Relicの検証を始め、2020年7月に正式採用した。
New Relicの選定理由として、ユーザー数に基づく明確な料金体系のためコスト見積もりが立てやすい点を挙げている。また、メトリクス、トレース、ログなどの多様なデータ収集・可視化機能が単一プラットフォームに統合されており、導入が容易であること、New Relic日本法人による手厚いサポート体制も決め手となった。
New Relicの導入により、開発から本番運用までの各フェーズでシステム全体のパフォーマンスの包括的な可視化が実現した。特にNew Relic APMの「External Services」機能により、共通基盤と連携する外部サービスのパフォーマンス把握が明確になり、課題の早期特定と迅速な対応が可能になった。また、アラート機能と社内チャットツールを連携させることで、関係者が状況を即座に把握できる体制を整え、障害対応時間は平均1時間短縮されたと推測している。
2024年9月に共通基盤の一部データベースを分散型NewSQLデータベース「TiDB」に切り替えた際にもNew Relicが活用された。New RelicはTiDB Cloud Dedicatedと連携機能があるが、ライト版のTiDB Cloud Starterについては連携機能がない。しかし、同社はNew Relic APMに蓄積されるデータベースクエリのメトリクスを活用することで、TiDB Cloud Starterの監視・可視化も実現した。これにより、開発から本番運用まで一貫したオブザーバビリティが確立され、新技術導入時の性能評価や円滑なリプレースにも貢献した。
さらに、ログの収集・分析の仕組みをNew Relic Logsにリプレースしてダッシュボードを統一化したことで、運用とコストの最適化が実現された。ダッシュボードを通じた情報共有により、関係者間の意思疎通が円滑になり、データに基づいた意思決定が加速することで、運用効率が高いレベルで維持されている。
同社CS制作統括 CSシステム開発部 福井勝貴氏は、「New Relicの活用によって、共通基盤というバックエンドシステムの安定性を高めるという目的は、相応のレベルまで果たせたと見ている」と述べている。
カプコンは今後、共通基盤を活用するゲームタイトルをさらに拡充し、メトリクスの拡充や監視体制の強化を図る方針だ。運用の自動化に向けた取り組みの一環として、New RelicのAI機能を活用し、ログ分析を通じて対応不要な事象を自動的に除外することで、エンジニアの運用負荷の軽減につなげたい考えだ。さらに、クラウドコストの一元化された可視化も視野に、New Relicのクラウドコスト管理ソリューション「Cloud Cost Intelligence」の導入も検討されている。