浮体式海洋石油・ガス生産設備の設計・建造などを手掛ける三井海洋開発は、ローコード開発プラットフォームを提供するスパイラルの「SPIRAL ver.1」を基盤に、投資家専用サイトを構築した。SPIRAL ver.1を提供するスパイラルが10月21日に発表した。このサイト構築により、月間約60件・約30時間かかっていた投資家への個別メール対応が約10件・約5時間と6分の1に大幅削減された。また、公平かつ効率的な情報発信体制が確立し、投資家への効果的な情報発信につながっている。
三井海洋開発は、FPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)と呼ばれる浮体式生産設備の建造から洋上でのオペレーション・メンテナンスまでを一貫して提供している。同社は近年、FPSO業界で世界初となるプロジェクトボンド発行による資金調達を採用し、国内外の投資家から大きな注目を集めていた。
従来、投資家向けの情報提供はメールで行っていたが、情報発信のたびに「資料を再送してほしい」といった初歩的な依頼を含む数十件の問い合わせがメールで殺到し、個別対応が業務を圧迫する課題を抱えていた。プロジェクトボンドが金融商品であるため、すべての投資家に対し公平かつ均質な情報提供が不可欠であり、回答内容のレベルや質の精査を入念に行う必要があった。世界の競合他社も同様の資金調達を採用し始めたことで、投資家向け情報への期待が一層高まり、体制強化が急務となっていた。
そこで同社は、効率的かつ公平な情報提供体制を確立するため、投資家専用サイトの構築を検討した。すでに他部門でSPIRAL ver.1を活用していたこと、費用対効果の高さ、そして短納期での構築が可能であることを評価し、基盤としてSPIRAL ver.1を採用した。
構築された投資家専用サイトは、会員登録を行った投資家のみがアクセスできる会員制サイトだ。サイトでは、プロジェクトに関連するFAQ、定期レポート、格付け情報などを公開し、新しい情報公開時にはSPIRAL ver.1から対象ユーザーへメールで一斉通知する仕組みも整備された。
サイトの公開は段階的に進められた。第1フェーズでは、投資家のニーズが高い会員専用サイトと会員登録申請ページを先行公開した。その後、第2フェーズとして、担当部門の管理者がレポートの公開・削除、お知らせの投稿、会員登録の承認・会員一覧の閲覧などを実行できる専用の管理者ページを構築した。会員登録については、申請内容を確認のうえ承認する仕組みとし、競合他社による情報収集を避けるための対策も講じている。
導入効果としては、投資家への個別メール対応の激減がある。これまでは月約60件・約30時間費やしていた対応が、投資家専用サイトで必要な情報をいつでも閲覧できるようになったことで、月約10件・約5時間まで削減された。特にFAQや過去レポートなどを公開したことで、これらに関する問い合わせはほぼゼロになった。個別対応の削減は、担当部門の心理的負担の軽減にもつながっている。
問い合わせ対応の時間が削減されたことで、プロジェクト改善に向けた議論や施策実行のための時間を確保できるようになり、効果的な情報発信に注力できている。投資家からも「必要な情報を見つけやすくなり助かる」といった好評の声が寄せられ、投資家との関係強化にも結びついている。
同社は今後、サイトユーザーである投資家の意見をふまえ、さらなる利便性向上を目指す。現状PDFのみの情報公開だが、動画公開など新たな形式での情報提供も検討し、投資家専用サイトの改良を進める。