横浜銀行は、ローン関連の証明書発行申請を電話で自動受付するサービスを新設した。その受付業務に、モビルスが提供する生成AIを活用した「AIエージェント型ボイスボット」を採用した。11月7日、モビルスが発表した。繁忙期には月1600件に上る証明書発行申請の電話受付を自動化し、応対時間を5割削減することで、顧客利便性と業務効率の向上を目指す。
同行では、住宅ローン年末残高証明書などの各種証明書の発行や再発行を行っている。特に年末調整や確定申告に用いられる住宅ローン年末残高証明書は、年末に向けて問い合わせが集中し、月間で約1600件(1日最大約150件)の電話問い合わせが発生していた。このため、オペレーターの人員不足から電話がつながらない「あふれ呼」が発生し、顧客利便性や満足度の低下、オペレーターの負担増が課題となっていた。
こうした課題解決と利便性向上、業務効率化を目的に、同行はローンに関する5種類の証明書の発行申請を対象とした電話自動応答サービスの新設を検討した。既に融資や外国送金の問い合わせ窓口にモビルスのボイスボット「MOBI VOICE」を導入していたが、新たなサービスでは、より人に近い自然な応対と顧客状況に応じた正確なヒアリングを実現するため、MOBI VOICEの新機能であるAIエージェント型ボイスボットの導入を検討した。
モビルスと横浜銀行は、2025年6月から3ヶ月間にわたり実証実験(PoC)を実施した。その結果、申請受付の開始から申請完了までの工程を自動化できることを確認し、課題解決につながると判断されたため、今回新設された電話自動応答サービスへの正式導入に至った。
今回導入されたAIエージェント型ボイスボットは、生成AIを活用することで、まるで人が応対しているかのような自然な対話を実現する。従来の自動応答では困難だった曖昧な依頼でも、意図をくみ取り、必要な情報を深掘りして正確に特定できる。顧客の話し方や状況に応じて柔軟に会話を展開し、受付手続きを完了させることが可能だ。
たとえば、証明書名や店舗名が不明確な回答であっても、登録情報や既存データを参照して高精度で候補を提示する。また、回答が不完全な場合は自然に問い返しを行い、必要な情報を聞き取って申請受付を完了させる。これにより、顧客はストレスの少ないスムーズな応対を体験でき、オペレーターは折り返し確認や情報修正などの手間を削減し、業務効率が向上する。
横浜銀行は、AIエージェント型ボイスボットの活用を進め、証明書発行における電話での応対時間を5割削減することで、顧客満足度の向上とコスト削減を目指す。今後は、24時間365日対応の実現や、他の業務への展開も視野に入れ、さらなる利便性向上を図る計画だ。
同行事務サービス部融資・外為Gの福島氏は、「MOBI VOICEを導入し、数年が経過したが、簡易的な受付以外は返電が必須だった」と振り返る。さらに、「この返電を無くせないかと考えていたところ、生成AI活用の提案を受け、今回のAIエージェント型ボイスボットの導入に至った」と述べた。不明瞭な情報に対してAIエージェントがきめ細やかにヒアリングを行うことで、「全量ではないが、返電不要の受電が実現できている」とし、「今後はフローなどを見直し、極限まで返電不要な受電を増加させていきたい」とコメントしている。