中国電力、エクサウィザーズのAIで火力発電所の燃料運用を最適化

2025年11月10日09:00|ニュースCaseHUB.News編集部
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 中国電力は、エクサウィザーズが開発したAIシステムを、三隅発電所の石炭火力発電所燃料運用に本格導入した。これにより、熟練社員が担っていた複雑な燃料運用計画業務を高度化し、発電所の安定運転を維持しながら、燃料コストの最小化、業務の標準化、多様な燃料への柔軟な対応を実現する。脱炭素化の流れに対応したバイオマス燃料の混焼にも対応しており、CO2削減への貢献も見込む。

 日本のエネルギー供給を支える石炭火力発電所では、安定供給を大前提としつつ、燃料価格の変動に応じた経済性向上が常に求められている。三隅発電所では、18基ある貯炭サイロの受払・貯蔵状況を考慮した複雑な燃料運用計画の策定を、限られた熟練社員が担っていた。この業務は発電所の安定運転やコスト管理に直結する重要業務である一方、属人化と計画品質の平準化が課題となっていた。

 さらに、脱炭素化に向けたバイオマス燃料の混焼拡大への対応は、運用の複雑性を一層高めていた。そこで両社は、一連の計画業務をAIでシステム化し、相互に連携させることで、計画立案のスピードと精度を向上させることを目指した。

 今回開発されたAIシステムは、「炭質評価システム」と「石炭サイロ運用支援システム」の2つで構成され、相互に連携して燃料運用の最適化を図る。熟練社員の知見や現場の複雑な制約条件を数理モデルとして組み込んだ、独自の最適化アルゴリズムがシステムの中核となっている。

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炭質評価システム・石炭サイロ運用支援システムのイメージ

 炭質評価システムは、石炭の銘柄ごとの発熱量や調達価格などを踏まえ、ボイラの安定燃焼を維持しつつ、経済性も考慮した最適な石炭・バイオマス燃料のブレンド比率を、従来比数百倍のスピードで提案する。バイオマス燃料の混焼にも対応している。従来、約2~3日を要していた40通りのブレンド案作成が、AIの活用によりわずか90分で約4000通りの混焼パターン評価が可能になった。これにより、新規の石炭銘柄を導入検討する際、利用可否と最適ブレンドを迅速に評価できるようになり、燃料調達のリードタイム短縮につながる。

 石炭サイロ運用支援システムは、炭質評価システムが算出した約4000通りのブレンド比率から、AIが最適なものを選択し、石炭受払計画を自動で策定する。この計画は、18基あるサイロの受入・払出からボイラへの投入順序までを網羅しており、補修作業に伴う石炭設備の使用可否や、石炭船のサイロ空き待ち滞船の低減、低品位炭の優先消費といった現場の複雑な条件も反映できる。従来は約1日を要していた3カ月分の計画策定が、わずか30分程度で完了するようになり、計画策定の工数削減を実現する。

 中国電力は、今後も安定調達やCN燃料(カーボンニュートラル燃料)を含めた燃料の多様化を目指し、さらなるAIシステムの活用を進めていく方針だ。足元では、外航船の配船計画策定を支援するAIシステムの構築を予定しており、燃料調達の最適化を推進する。

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