茨城県取手市は、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策を目的に、AI音声認識「AmiVoice」を搭載した窓口対応向けソリューションのテスト運用を開始した。11月25日、同ソリューションを提供するアドバンスト・メディアが発表した。窓口での会話内容や感情を可視化することで、対応する職員の心理的安全性を確保するとともに、市民サービスの質向上につなげる狙いだ。
近年、顧客による迷惑行為であるカスハラが社会問題化しており、自治体においても職員の安全確保が急務となっている。取手市では行政のデジタル化を推進する一方で、窓口業務における課題を抱えていた。特に市民協働課では、個室などの閉鎖的な空間で対応したり、複数人の市民に対して職員1人で応対したりするケースも少なくない。そのため、職員が精神的なプレッシャーや不安を感じる場面があり、安心して働ける環境づくりが求められていた。
そこで取手市は、対応内容の「可視化」に着目し、アドバンスト・メディアのソリューションを採用した。同市とアドバンスト・メディアは2021年から技術連携協定を締結しており、今回の取り組みもその一環となる。導入されたソリューションは、AI音声認識による会話の文字起こしに加え、感情解析を活用してリアルタイムにモニタリングを行うもので、対面のカスハラ対策としてこの仕組みを運用するのは自治体として初の試みだ。
テスト運用は11月18日から12月26日までの予定で、市民協働課の相談室で実施されている。ソリューションはオフライン環境で動作するスタンドアローン方式のため、記録された情報が外部に漏れるリスクがなく、安全に管理できる。相談者とのやり取りを自動で文字化して記録することで、万が一トラブルが発生した際にも客観的な事実確認が可能となる。また、蓄積されたデータをAIで分析することで、カスハラを誘発しやすい言動の傾向を把握でき、マニュアルの見直しや職員教育の改善といった現場対応力の強化にも活用できる。
取手市は今回のテスト運用を通じて、カスハラの抑止効果や職員のストレス軽減効果などを検証する。将来的には検証結果を基に、トラブル発生時に客観的な記録を活用できる体制の構築を目指す方針だ。