武田薬品工業、固定資産業務にAI OCRと機械学習を活用 資修判定を自動化し工数半減へ

2025年12月12日22:35|ニュースCaseHUB.News編集部
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 武田薬品工業は、ファイナンス領域における固定資産業務の自動化プロジェクトを開始した。そのためのソリューション開発パートナーとしてEY税理士法人を選定し、AI OCRと機械学習を組み合わせたシステムを共同開発した。12月11日、EY税理士法人が発表した。専門知識を要する「資修判定」などの業務を自動化し、将来的に当該業務の工数を約50%削減する見込みだ。

 武田薬品工業は、国内に本社を置くグローバル製薬企業。同社ではこれまで、工場の生産設備などの導入に伴う見積書のデータ入力や、その支出が資産計上か費用計上かを判断する「資修判定」に多くの時間を費やしていた。特に資修判定は、税務上の判断を含む高度な専門知識と経験が必要であり、ベテラン社員への依存や属人化が課題となっていた。また、製造部門だけでも、形式が異なる多様な見積書のExcel転記作業に年間1000時間以上を要しており、業務効率化が急務だった。

 今回共同開発したソリューションは、AI OCR(光学式文字読み取り)と機械学習AIを組み合わせたものだ。AI OCRがPDFや紙媒体の見積書を読み取ってデータ化を自動化し、さらに機械学習AIが過去の実績データを学習することで、適切な資産クラスの選定や法定耐用年数の判定、資修判定を自動で提案する。

 このソリューションにより、見積書の入力から会計処理の判定まで、固定資産業務のEnd-to-Endプロセスの約80%から90%を自動化できる。これにより、最終的には当該業務にかかる工数を約50%削減できると試算している。また、属人化しがちな知識やスキルをAIでモデル化することで、業務水準の標準化も実現する。

 プロジェクトは2025年5月に開始され、約5カ月間の短期間で開発が進められた。武田薬品工業が業務要件の提示や学習用データの提供を行い、EY税理士法人がモデル開発や精度検証を担った。AI OCRは同年11月から本格導入を開始しており、機械学習AIについてもパイロット導入を経て、2026年4月の本格稼働を予定している。

 武田薬品工業のTBSファイナンスソリューションズ ジャパンヘッドアンドジャパンサイトリードである図師康剛氏は、「特定スキルの人材不足は日本社会全体の課題だ。本取り組みが当社だけでなく、データとデジタルの活用によって課題を解消する一助になればと考える」としている。

 今後は、国内だけでなく海外拠点への展開も視野に入れており、グローバル全体での固定資産業務の迅速化と生産性向上を目指す考えだ。

ニュースリリース