前田建設工業、シールド工事の切羽圧制御をAIで支援 予測精度9割、熟練技術を継承

2026年9月4日09:00|ニュースCaseHUB.News編集部
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 前田建設工業は、シールドトンネル工事の安定掘進を支える「切羽圧制御支援システム」を開発した。AIモデルの設計や検証、アプリケーション開発にあたってはULSコンサルティングの支援を受けた。9月3日、ULSコンサルティングが発表した。熟練技術者の知見に依存していた切羽圧の監視と制御をAIで補助し、施工現場の安全性向上や技能伝承につなげたい考えだ。

 前田建設工業は、大規模な土木・建築プロジェクトからインフラ運営まで幅広く手がける総合建設会社。設計から施工、維持管理、バックオフィスに至る各領域で生産性向上を図るため、長年にわたり技術開発や業務改革を進めてきた。建設業界全体で担い手不足への対応や働き方改革が喫緊の課題となる中、同社は業務の効率化と熟練技術の伝承を目的としたAIの活用を推進している。

 今回のシステム開発は、トンネルシールド工事の現場にAIを適用する取り組みの一環として実施された。シールド工事では地盤の沈下や隆起を防ぐため、掘削中の地中壁面に対して適切な圧力である「切羽圧」を常に保ちながら掘進する必要がある。しかし、切羽圧の厳密な監視や制御は熟練技術者の経験と知識に頼る部分が大きく、技術伝承や将来的な担い手不足への対策が課題となっていた。こうした状況を打開するため、AIを活用して人間のオペレーターを支援する仕組みの構築に着手した。

 システム開発のパートナーには、長年にわたり前田建設工業のIT活用を支援してきた実績を持つULSコンサルティングを選定した。同社が有する技術力と実現力を評価し、AIモデルの設計・検証から実運用を見据えたアプリケーションのプロトタイプ開発までを一貫して委託した。

 プロジェクトではまず、施工設備に設置された各種センサーデータから約3000項目に及ぶ特徴量を抽出。切羽圧の変動を予測し、安全な基準値の上限や下限を超過するかどうかを的確に判定するAIモデルを設計した。学習データの整備やデータ間の相関関係解析、モデルの評価方法の策定にあたっては、前田建設工業のシールド工事技術者と緊密に連携し、建設現場特有のデータ特性や専門知識を組み込んだチューニングを行った。

 併せて、現場のオペレーターが直感的に操作できるアラート発報アプリケーションのプロトタイプを開発した。切羽圧の異常変動が予測された際には、画面の発光や点滅、警告音によって即座にオペレーターへ通知する。現場での誤作動を防止する制御を組み込むなど、施工環境での実用性と信頼性に配慮したユーザーインターフェースを実装した。

 完成した切羽圧制御支援システムは、実際の施工現場において実用性の検証が行われた。その結果、約10秒先に発生する切羽圧の変動について、熟練技術者の判断と約90%の確率で一致する予測精度を確認した。熟練者の経験知をAIで補完できる見通しが立ったことで、経験の浅い技術者でも安全かつ安定した掘進管理を行える環境が整った。

 同システムは、前田建設工業が全社的に運用しているシールド工事の共通基盤「MAIOSS-Ⅱ」を活用して構築されている。特定の施工現場専用の仕組みにとどまらず、他のトンネル工事現場へも容易に水平展開できる拡張性を備えているのが特長だ。同社は今後、本システムを各地のシールド工事現場へ展開していくとともに、さらなるAI活用と建設現場の業務変革を推進する。

ニュースリリース