トヨタ自動車東日本は、再生可能エネルギーの活用拡大と地域の防災拠点としての機能強化を目的に、同社岩手工場にEMS(エネルギー管理システム)「EMilia」を導入した。4月20日、同システムを提供する日立製作所が発表した。AIによる高精度な電力需要予測とリアルタイムな需給コントロールにより、天候によって発電量が変動しやすい再生可能エネルギーの活用を最適化する。合わせて災害時の非常用電源を確保し、事業の安定運営と地域社会の強靭化につなげる考えだ。
トヨタ自動車東日本岩手工場では、地域の脱炭素化と防災性向上を目指し、平常時の再エネ地産地消と有事の際の広域防災拠点への電力供給に取り組んでいる。しかし、天候で発電量が変動する再エネの利用を増やすと電力の需給バランスが崩れやすくなるという課題があった。従来のインバランス(事前の計画と実績の差分)調整は熟練者の経験に依存しており、手間がかかるうえに予測精度にばらつきが生じていた。さらに、日々の需給調整を行いつつ、災害に備えた蓄電池残量を常に確保しておくという複雑な運用が求められていた。
そこで、自社の再エネ利用拡大と地域社会への貢献を両立する中核システムとして、現実世界を認識し自律的に判断するフィジカルAIを実装したEMiliaを採用した。4月からの稼働にあたっては、日立製作所と共同で自動車工場向けの機能拡張を実施。トヨタ自動車東日本が持つ生産計画情報や過去の稼働実績データをAIの予測モデルに組み込むことで、工場特有のわずかな稼働変動も捉える仕組みを構築したという。
EMiliaの活用により、気温などの気象情報と生産情報を掛け合わせ、電力需要予測の精緻化を図る。設備の制約条件や、規定時間内のCO2フリー電力の上限値以内に買電を収めるといった複雑な運用ルールを加味した上で、敷地外からのオフサイト再エネ受電計画を自動で立案するという。リアルタイムの需要変動に対しても現場の状況を常時監視し、コージェネレーションシステム(熱電併給システム)や蓄電池などの分散型エネルギーリソースを自律的に制御することで、試運転調整時にはインバランス率1%前後という高精度な運用を達成した。
また、日々の需給調整と並行して、災害等による停電時に備えて蓄電池の残量を自動で確保する機能も新たに備えた。有事の際における近隣地域への送電機能を維持し、企業の事業継続と地域のレジリエンス向上に寄与する。