幸袋テクノは、複雑化する仕訳入力業務の負担軽減を目的に、TOKIUMの経理AIエージェント「TOKIUM AI明細入力」を採用した。5月29日、同サービスを提供するTOKIUMが発表した。経理知識を持たない担当者でも仕訳入力を行える仕組みを整備し、年間80時間以上の工数削減を見込む。あわせて、各部署の担当者が入力を行い、部署責任者が費用の内容を確認・承認したうえで支払いに進む請求書処理フローを構築し、ガバナンスの強化につなげる狙いだ。
日鉄鉱業グループに属する幸袋テクノは、鉱山用や建設用、化学用などの破砕機や篩分け機、残土改良機の製造・販売を手掛ける産業機械メーカーである。各種製品の部品を多数の取引先から仕入れており、月間では120件以上の請求書を処理している。
同社では、電子帳簿保存法対応を契機に、経費精算業務をExcelからスマートフォン対応の「TOKIUM経費精算」へ移行していた。また、郵送やFAX、Webダウンロードなど多様な経路で届く月120件超の請求書を一元管理するため、「TOKIUMインボイス」も導入済みである。これらの仕組みにより、会計システムへの手入力の削減や処理漏れの防止、業務プロセスの標準化などの効果を得ていた。
一方で、新たな課題として請求書処理時の仕訳入力が顕在化していた。扱う部品の種類が多岐にわたり、勘定科目の判断が複雑であったため、経理知識が十分でない各部署の担当者に入力を任せると誤入力のリスクが高かった。少人数の経理担当者だけでは、すべての部署の仕訳をチェックし修正することは困難であり、結果として経理側が仕訳入力を一括で代行する運用となっていた。この体制では、部署責任者が請求書の内容を十分に確認しないまま支払いが進むケースが生じ、内部統制の観点で課題となっていた。仕訳入力業務を現場へ戻しつつ、効率的に処理できる体制づくりが求められていた。
採用の決め手となったのは、AIが請求書の明細を読み取り、取引内容や金額、取引先名、過去の仕訳データなどを基に勘定科目を自動判定して入力する機能である。取引先ごとにフォーマットが異なる請求書にも対応できるほか、煩雑な初期設定を必要としない点を評価した。ユーザーが修正した内容をAIが自動学習する仕組みにより、利用を重ねるほど判定精度が向上し、担当部署への展開後も経理部門の負荷が徐々に軽減されると見込んでいる。
導入効果として、1行の明細で構成される定型的な請求書では、AIによる自動判定の精度が高まり、内容確認にかかる手間がほとんどなくなった。月間請求書のうち約3分の1については、仕訳入力の自動化が実現している。複数行の明細を含む請求書でも、従来1件あたり約10分を要していた手入力作業が、AIが出力した仕訳の確認と一部修正のみで済むようになり、作業時間はおおむね10分の1程度まで短縮された。これらを合わせ、年間80時間以上の工数削減を見込んでいる。経理課内での検証により、1行明細の請求書であれば現場に入力を任せられる水準に達したことから、今後は各部署への本格展開を進める。
同社は今後、AIが入力や処理の多くを担い、人間は例外判断や最終確認に集中する体制の構築を目指す。労働人口の減少が進む中、少人数でも事業運営を継続できる仕組みを整え、属人化を抑えた組織基盤の確立を図る。
幸袋テクノ企画管理部経理課の小正明史氏は、これまでは仕訳の複雑さから経理が入力を代行しており、入力後に担当部署の確認を経ないまま支払いが完了するケースがあったと振り返る。TOKIUM AI明細入力の導入により、経理知識がない担当者でもAIのサポートを受けながら仕訳入力が可能になり、請求書処理を現場へ戻すことが現実的な選択肢になったとする。年間約80時間の工数削減に加え、部署責任者の承認を経て「正しいルートで正しい費用として支払われる」フローを構築できる点にも手応えを感じていると語っている。