キリンホールディングス(キリン)は8月6日、AIエージェントを研究活動に常時組み込んだ新たな業務環境を構築し、一部の研究部門で運用を開始したと発表した。システムの開発と実装はGenerativeXが担っている。仮説形成から知識共有までの一連のプロセスをAIが支援する「AIネイティブな研究環境」を構築し、研究の質の向上につなげたい考えだ。
近年、生成AIの進化によって文献探索や仮説生成などの領域にもAIの活用が広がっている。しかし多くのケースで、文書作成や検索といった一般的かつ単一の業務を効率化する用途にとどまっているのが実態だ。また研究開発の現場では、情報探索や過去資料の検索、仮説の整理、成果の共有など性質が異なる業務をまたぐことで思考が何度も中断され、研究者が本来注力すべき創造的な活動に集中しにくい状況が生じていたという。
こうした背景から同社は、AIエージェントを研究活動の一連の流れに組み込むことで課題の解決を図った。キリンホールディングスが研究構想の設計と研究現場への適用を担い、GenerativeXがAI技術の提供とシステムの実装を担当している。システムの開発は、研究者が実際に使いたい機能とAI技術の可能性をすり合わせるため、現場の意見を取り入れながらアジャイル形式で進めた。
新しい環境の特徴は、研究者が都度AIを呼び出すのではなく、活動の中にAIが常時存在している点にある。仮説形成、情報探索、壁打ち、ドキュメント化、知見の共有をシステムがリアルタイムで支援するため、研究者は思考を止めることなく活動を進められる。AIを人間の代替手段としてではなく、創造性を引き出す伴走者として位置づけている。
これまで個人の中に閉じていた仮説や議論、探索履歴などのデータも蓄積されるため、組織全体での活用も見込んでいる。開発に関与した研究員からも自らの活動に適したツールとして受け止められているという。同社は「AIを単なる業務効率化ツールとしてではなく、研究という知的創造活動そのものに活用している。新たな仮説探索の可能性拡大、異分野融合の促進、研究の質の向上につながる」としている。
現在は一部の研究所で運用しているが、今後はグループ全体への展開も視野に入れている。研究者ごとの専門性やテーマを学習し、課題兆候の検知や仮説の提案、研究者間の連携を促進する機能などの拡充を進める計画だ。将来的には、研究者が意識せずともAIが自然に業務をサポートする環境の構築を目指すという。