ネットワンシステムズは9月14日、Databricksの「Data + AI プラットフォーム」を活用して社内用の個人向けAIエージェント「NetOne Claw」を独自開発し、2026年8月に全社展開を開始したと発表した。社員一人ひとりの状況を把握して業務を支援する伴走型の仕組みを整備し、厳格な権限制御によるセキュリティの確保とLLM利用コストの80%削減を両立させた。蓄積した開発運用のノウハウを顧客向けAI基盤の提案や構築支援にも活かす。
一般的に自律型のAIエージェントは業務効率化に寄与する一方、企業での利用においてはアクセス権限や通信先の制御など、情報セキュリティ面での制約や懸念が多い。ネットワンシステムズでは既存の市販AIエージェント製品を採用するのではなく、自社のセキュリティ要件に最適化させたエージェントの内製化を選択した。業務遂行のみを目的化せず、社員や組織の状況を把握して寄り添う支援を目指した。
開発したNetOne Clawは、チャットツールを窓口として各社員のPCにインストールして利用する。メールや予定表、チャット、Web会議、社内ポータル、クラウドストレージ、PC内のファイルと連携し、毎朝の予定や直近の業務リストを自動通知する。会議前には、出席者の過去メールやクラウドストレージ上の情報を基に、出席者一覧と要確認事項を自動通知するほか、会議室を含む日程調整も自動化する。さらに、プロジェクトの状況に関する質問への自律回答、新規業務の立ち上げに伴うヒアリングと作業計画の作成、重要メールの未返信通知、社内情報の横断検索、週報や日報の自動作成まで幅広い業務を支援する。また、社員や組織、業務の文脈を把握させる「オントロジー」の構築機能を備え、回答精度の向上を図っている。
企業利用に適した安全性を確保するため、セキュリティ対策を徹底した。管理者側で利用可能データや連携システムを一元制御し、社内システムへのアクセスはシングルサインオン経由で社員個人の権限に準拠させる。各種パスワードやAPIキーの取得、会議予約を除くメール送信、ソフトウエアのインストール、ファイルの書き込み・削除は実行できないようにした。さらにメールやPC内ファイルの読み取りは社員が指定したフォルダに限定し、メール本文は取得せず件名と送信者情報のみを扱う設計とした。
AIエージェント運用の大きな課題となる大規模言語モデル(LLM)の利用料抑制に向けては、Databricksの統合AIガバナンス機能「Unity Gateway」を活用した。動作全体の可視化とガバナンスを効かせつつ、処理内容に応じて安価なモデルへ切り替える仕組みを導入。応答キャッシュや形態素解析の活用、LLMを経由しないスラッシュコマンドの実装により処理量を圧縮し、全社展開前の1カ月間の試用において約80%のコスト低減効果を確認した。
ネットワンシステムズは今後、全社を網羅するオントロジーの構築を進め、各社員にとって信頼できる相棒となる環境を目指す方針だ。自社実践を通じて得られたAIエージェントの開発や運用に関する知見を体系化し、顧客に対するAI基盤の提案や構築、運用の支援業務にも幅広く展開していく。