ソフトバンクは、開発中の生成AIサービス「satto workspace」の運用監視基盤として、New Relicのオブザーバビリティプラットフォーム「New Relic」を採用した。12月9日、New Relicが発表した。マルチクラウドおよびシングルテナント環境で稼働する数千規模のテナントを一元的に監視し、運用負荷を軽減する狙いだ。サービス品質の維持とコスト適正化を図り、ビジネスと開発、運用が一体となるBizDevOps体制の構築を目指す。
ソフトバンクが開発を進めるsatto workspaceは、資料作成業務を支援するエンタープライズ向けのSaaSだ。自然言語によるAIとの対話を通じて、情報収集から構成、表現までを一気通貫で支援するもので、2026年春の正式リリースを予定している。同サービスはAWS、Google Cloud、Microsoft Azureのマルチクラウドを基盤とし、顧客情報を保護するためにシングルテナント方式を採用している。しかし、ユーザー数の増加に伴い監視対象となるテナント数が膨大になることが予想され、運用業務の負荷増大が懸念されていた。また、開発エンジニアが運用も担うBizDevOps体制を構築するためには、サービスの稼働状況を詳細に可視化する必要があった。
比較検討の結果、ソフトバンクはNew Relicの採用を決定した。選定にあたっては、AIコーディング支援ツールとの連携による開発プロセスの効率化など、先進的な機能を備えている点を評価した。また、CI/CDプロセス全体の観測に適しており、インフラをコードで管理するIaC(Infrastructure as Code)フレームワークに対応している点も重視された。さらに、サービス数ではなくユーザー数をベースとした料金体系であるため、シングルテナント構成でもコストの見通しが立てやすい点や、日本法人による手厚い技術支援も決め手となった。
導入プロジェクトは2025年4月に開始され、AWS環境へのエージェント組み込みなどを経て同年11月に概念実証(PoC)を完了した。従来はエラー発生時にログやデータベースなどの複数の画面を確認する必要があったが、New Relicの導入により単一の画面で状況を把握できるようになった。これにより、原因特定から解決までの時間の大幅な短縮を実現した。また、テナントごとのリソース使用状況も一元的に可視化され、チューニング作業やコスト管理の効率化にもつながっている。
今後は、オブザーバビリティのコード化を進めるとともに、利用範囲をプロダクトオーナーやカスタマーサクセス部門にも拡大する方針だ。観測データを共通言語として部門間の連携を強化し、サービス品質と顧客満足度の向上を図る。将来的にはAIツールとNew Relicを連携させ、コードの修正からデプロイまでの自動化も視野に入れている。
ソフトバンク IT統括 iPaaS事業開発本部 プロダクト開発課 担当部長の田口悠希氏は、「New Relicは要望への反応が早く、技術サポートの品質も高い。我々のスピード感に合わせた支援のおかげで、パイロット提供の準備に間に合わせることができた」と話している。