アストラゼネカは、AWSの機械学習を活用した検索サービス「Amazon Kendra」を導入し、エンタープライズ検索ソリューションを構築した。2023年6月末に本番環境に移行した。2023年7月31日、アマゾン ウェブ サービス(AWS)が発表した。
医療情報担当者(MR)は、医療従事者に情報を提供する際、常に最新の承認済みマーケティングコンテンツを参照する必要があり、膨大な情報の中から適切な情報を見つけ出すことに課題を抱えていた。アストラゼネカは、AWSと協力しAmazon Kendraを活用した概念実証(POC)を実施した。Amazon Kendraは、自然言語処理を用いることで、従来のキーワード検索では難しかった、文書の意味内容を理解した高度な検索を可能にする。Amazon Kendraは、日本語を含む複数言語に対応しており、アストラゼネカが求める日本語対応のセマンティック検索の要件を満たしていた。
POCでは、コンテンツ管理システム「Box」とAmazon Kendraを連携させ、Box上の文書に対しセマンティック検索を可能にした。ドキュメントが作成、更新、削除されると、Webhookサービスを介しAmazon SQSにメッセージが送信され、Lambda関数が起動してAazon Kendraへのインデックス登録や削除が行われる。これらの処理はイベント駆動型で行われ、リアルタイムでの情報更新を実現する。
POCの結果、既存のエンタープライズ検索と比較して、検索結果精度は2倍に向上した。また、検索速度(平均評価は4.4/5対2.4/5)とアクセシビリティ(平均評価は4.2/5対2.2/5)も大きく向上した。POCに参加した利用者の93%が、ソリューションを本番環境に展開することを推奨しており、「AIによる従業員の生産性の向上は、デジタルワークフォースの重要な基盤です。このプロジェクトは年間1万2000時間の生産性の改善を実現し、社内のAIエンジニアの才能と、AWSチームとの緊密なパートナーシップによってもたらされるインパクトを示しています」と、アストラゼネカの情報担当責任者であるHarsh Gandhi氏はコメントしている。
アストラゼネカは今後、より多くのデータソースを追加し、コンテンツの分類を改善するために「Amazon Comprehend」との統合を進める。また、「Amazon Lex」と「Amazon Polly」を組み合わせたチャットボットの統合で、音声対話をサポートする計画もある。これにより、MRは外出先でもハンズフリーで情報にアクセスできるようになる。
さらに、生成AIの普及を踏まえ、検索拡張生成(RAG)ベースのアプリケーションで大規模言語モデル(LLM)を搭載した対話型AIの活用も検討している。