東レグループの商社である一村産業は、テイラーが提供する業務ソフトウェアプラットフォーム「Tailor Platform」を採用して次期ERPを構築する。8月29日、テイラーが発表した。オンプレミス環境で運用してきたSAP製ERPのリプレースプロジェクトの一環で、多角化する事業の複雑な販売管理業務に柔軟に対応できる基盤を構築する狙い。将来的にはAIを活用したデータ分析や受注業務の省力化を進め、競争力強化を目指す。
一村産業は創業130年以上の歴史を持つ東レグループの中核商社で、繊維、産業資材、住宅資材の分野を幅広く手掛けている。多角的な事業展開と、顧客ごとのニーズに合わせた提案力を強みとし、商社機能に加えて製造機能も有している。
同社はこれまで、オンプレミス環境でSAPのERPを運用してきたが、事業領域の拡大に伴って部門ごとに異なる業務要件が増加し、標準的なパッケージシステムでは対応が困難になっていたという。特に、繊維と住宅資材という異なる事業特性に合わせた販売管理を一つの統合パッケージで行うことの難しさや、機能追加・カスタマイズに伴うコストと期間の増大、AIや新たなSaaSとの連携を見据えた際の拡張性不足などが課題となっていた。
こうした背景から、一村産業は次世代のERP基盤としてTailor Platformの採用を決定した。「ヘッドレスERP」というコンセプトで、APIをベースにモジュールを柔軟に組み合わせられるコンポーザブルなアーキテクチャーを持つ点を評価。事業部門ごとの固有業務に適合したシステムを構築できると見込む。また、会計業務は標準的なパッケージソフトで効率化し、競争力の源泉である販売管理はテイラーの専用モジュールで強化するといったハイブリッド構成を実現できることや、AIなどの先進技術を取り入れやすい拡張性も採用を後押しした。
導入プロジェクトは要件定義から稼働開始まで約3年を予定しており、2026年春の導入完了を目指す。繊維事業と住宅資材事業の販売管理領域を中心に導入し、会計システムやBI、SFA、CRMといった各種サービスとも連携させる。利用範囲は経営陣を含む全社員に展開する計画だ。
今後は、構築したERPを基盤に、AIエージェントを導入して経営データや販売データを分析するほか、AI-OCRなどを活用して手書きのFAXなどによる受注業務を省力化し、人手不足への対応と処理の迅速化を図る。さらに、ERPと直結した取引先向けのインターフェースを提供するなど、顧客体験の向上にも取り組む考えだ。
一村産業システム部次長の辻村昌之氏は、「従来のERPでは画一的な業務プロセスに縛られ、各事業の強みを十分に生かせなかった。次のERPでは、管理を共通化しつつ、各事業部門が競争力を高められる仕組みを導入したいと考えていた」とコメント。100を超える製品・ベンダーを検討した結果、テイラーを選定したとしている。