東証、株式売買システムarrowheadを刷新し利便性とレジリエンス強化

2024年11月6日19:35|ニュースCaseHUB.News編集部
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 東京証券取引所(東証)は、株式売買システム「arrowhead」をリニューアルし、「arrowhead4.0」として2024年11月5日から運用を開始した。富士通が発表した。arrowheadは2010年1月の稼働開始以来4世代目となる。

 今回のリニューアルでは、市場の利便性向上と投資家など利用者の取引機会最大化を目的とした。具体的には、クロージング・オークションの導入や注文ごとの相場情報配信サービスの提供、機関投資家などのユーザ単位での注文一括取り消し機能の導入などを実施した。また、取引時間を延伸するとともに、レジリエンス(障害回復力)の強化を図った。

 クロージング・オークションは、大引けの売買の重要性が高まる中、終値形成における透明性のさらなる向上を目的としたもの。後場の15時25分から5分間の注文受付時間を設けた後、15時30分に板寄せを行う。従来の板寄せの条件で約定しない場合でも、一定の条件を満たせば売買成立可能値幅の上下限で時間優先により注文を約定させることで、終値成立機会を向上させる。

 Market by Order型の相場情報サービスは、注文ごとに相場情報を配信するサービス。これにより、利用者は値段ごとに集約した相場情報に加え、注文ごとのより詳細な相場情報を取得できるようになる。ユーザ単位で複数の注文を一括で取り消す「マスキャンセル」機能は、機関投資家などの利便性向上を目的としたもの。取引時間の延伸は、投資家の取引機会を拡大し市場としての利便性を向上させるため、東証の取引終了時刻を15時00分から15時30分に30分延伸した。

 レジリエンス強化では、メモリ上に配置した取引情報を三重化して複数サーバで並行動作させることにより、障害時における秒オーダでのサーバ切り替えやデータの保全性を確保し、安全安心なシステムの稼働を実現した。万が一、システムに障害が発生した場合に備え、売買を継続するための改善を継続するほか、これまで以上に迅速かつ円滑な復旧に向けた取り組みを進めることで、取引機会の確保を目指す。

 レジリエンス向上のため、超高速インメモリデータ管理ソフトウェア「Fujitsu Software Primesoft Server」により、メモリ上に取引情報を配置することでマイクロ秒レベルの超高速データアクセスから高いレスポンス性能とスループット性能を実現した。また、システム再立ち上げを伴う障害回復時間の短縮を実現するため製品の改善を実施したほか、arrowhead4.0が提供するサービスの正常性を可視化する監視画面を構築した。

 システムの性能向上および耐性強化のため、富士通グループの最新のx86サーバ「PRIMERGY RX2540 M6」462台への基盤更改を実施した。システムの疎結合化を推進するため、日本取引所グループのクラウド基盤上にシステムログデータの蓄積・分析業務領域を、取引機能と分離して構築した。蓄積分析と取引の一部機能をシステム上疎結合にすることで、市場運営の信頼性を向上させるとともに、より柔軟な市場データの分析を可能とした。

 障害対応の高度化に向けては、東証と富士通が一体となって障害に対応するチームを構築した。障害の影響範囲や原因特定に資する機能を開発し、システムと人の両面で障害対応のさらなる迅速化を実現する。

 東証と富士通は今後、市場を巡る環境変化や多様化する投資家のニーズに対応するとともに、市場利用者の利便性や東京市場の国際競争力、レジリエンスをさらに高め、安全安心な市場取引を実現することで、より一層のマーケットの発展に努めていく。 

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