ソニーグループ(ソニー)は、グループ全社の業務効率化およびファンとクリエイターのエンゲージメント強化を目的に、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の生成AIおよびクラウド技術を活用した基盤構築を進めている。12月3日、AWSが発表した。社内向けの「エンタープライズAI基盤」と顧客向けの「エンゲージメントプラットフォーム」を整備し、イノベーションの加速と新たな顧客体験の創出を目指す。
ソニーは、ゲーム、音楽、映画、エレクトロニクスなど多岐にわたる事業を展開し、テクノロジーとクリエイティビティを融合させた「感動」の提供を掲げている。今回、グループ全体のイノベーションを加速させるとともに、多様な事業ポートフォリオを横断してファンとクリエイターのつながりを深めるため、AWSの包括的なサービスを活用した基盤強化に取り組むこととした。
社内業務を支援するエンタープライズAI基盤では、AWSのAIエージェント構築・運用サービス「Amazon Bedrock AgentCore」を採用した。これにより、セキュリティや可観測性、拡張性を確保しながら、グループ全体でAIエージェントをシームレスに構築・管理できる環境を整備した。
このAI基盤は、すでにコンテンツ作成や問い合わせ対応、予測、不正検出、アイデア出しなどの業務で活用されており、1日あたり15万件の推論リクエストを処理している。この処理規模は今後数年で300倍以上に拡大する見込みだ。また、最先端のAI構築を支援する「Amazon Nova Forge」プログラムも活用しており、初期検証では、AIエージェントの性能強化によって社内のドキュメント評価・審査プロセスの効率が従来比で約100倍に向上する可能性が示されている。
一方、対外的な価値提供を支えるエンゲージメントプラットフォームの中核として、データ利活用基盤「Sony Data Ocean」を構築した。「Amazon SageMaker」などのAWSサービスを活用し、グループ各社が保有する500種類以上のデータセットを連携。760テラバイトに及ぶデータを処理し、AIによる分析を通じてファン同士のつながり創出や、クリエイターへのトレンド情報の還元を行っている。さらに、「PlayStation」のオンラインサービス基盤が持つアカウント管理や決済、セキュリティなどのコア機能を拡張し、ビジネスオペレーションとファン体験の最適化を図っている。
ソニーグループ 執行役 CDOの小寺剛氏は、「テクノロジーの進化とともに、エンターテインメントの可能性も広がっている。AWSとの長年のパートナーシップを通じて、今はデータとAIの力を最大限に活用して、ファンとクリエイターの間に新たな絆を築くことができるようになった。この取り組みは、エンターテインメント産業の未来を形作る重要な一歩だ」と話している。