名古屋市、AWSコスト管理ツール「srest」でガバメントクラウド環境の財務管理効率化

2025年6月11日03:43|ニュースCaseHUB.News編集部
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 名古屋市は、ガバメントクラウド環境における財務管理の効率化を目的に、AWSコスト管理ツール「srest」を採用した。srestを提供するメタップスホールディングスが、6月10日に発表した。

 名古屋市は2022年に策定した「名古屋市役所DX推進方針」に基づき、AWSを基盤としたガバメントクラウド環境への移行を進めてきた。各業務システムは「単独利用方式」で構築され、柔軟な運用とガバナンスの強化を両立する設計となっている。一方、システムごとにAWSアカウントが分かれており、クラウドコストの全体像を横断的に把握することが難しく、費用按分や帳票作成が属人的かつ手作業中心となるなど、検収・支払い業務に多大な工数が発生する課題があった。さらに、請求情報がPDF形式でのみ出力可能なため、一元管理や集計作業の煩雑さも顕在化していた。

 これらの課題を解決するため、名古屋市は2025年3月にガバメントクラウド環境でのFinOps実践を目指し、srestを利用した実証実験を実施した。実証実験では、複数のAWSアカウントにまたがる請求情報の自動収集と可視化、業務・会計単位での費用配賦など、srestの有効性が短期間で証明され、2025年度より本格運用を開始することとなった。

 srestを活用して各AWSアカウントの請求データを自動で収集・整理し、コスト配分タグをもとに業務単位・会計単位での内訳を明確化した。従来は手作業だった会計別請求額の按分計算や帳票作成などの作業が効率化され、検収・支払事務にかかる工数を削減している。また、AWS上でタグが付いていないサービスもsrest独自の設定でコスト配賦が可能となり、手作業の負担が軽減された。さらに、新たに搭載された「CSVダウンロード機能」により、アカウント別・会計別に集計した一覧を出力できるようになり、検査確認作業も一層効率化された。

 srestによりコスト構造が可視化され、各クラウドサービスの費用内訳を詳細に把握できるようになった。これにより、一部サービスで当初想定を上回る利用料金が発生していることが判明し、名古屋市はログの保存設定や監視機能の見直しなど、無駄な支出を抑える最適化に取り組んでいる。また、毎月のクラウド利用額や費用内訳を継続的にモニタリングできるようになり、実際の支出データをもとに翌年度の予算を見積もれるようになり、財政局との予算枠設定もスムーズに行える。担当者の経験に頼らず、データに基づいた予算算出の仕組み作りが進んでいる。

 名古屋市総務局デジタル改革推進課の高橋広和課長補佐は、「現在、名古屋市含め全国の自治体で基幹業務システムをガバメントクラウドに移行する大規模プロジェクトが進行している。期限が非常に短いため国や事業者に余力がなく、ダッシュボード構築や請求内訳確認といった運用足回りの整備が間に合っていない。そうした状況で、srestのようにSaaSで必要なサービスを提供いただけるのは非常にありがたい」と評価している。

 今後、名古屋市は本格運用を通じてガバメントクラウド移行に向けた連携を強化するとともに、クラウド利用と財務管理を統合的に最適化するFinOpsの運用体制を強化する。

ニュースリリース


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