2025年10月30日に開催された「Zendesk Showcase Tokyo 2025」において、BANDAI SPIRITS 戦略部サービス&カスタマーチーム アシスタントマネージャーの仲居 麻衣子氏が、「上司の無茶振り『海外よろしく!』から始まるCS未経験者の"プレミアムバンダイ海外拡大奮闘記"」と題した講演で、Zendesk活用の取り組みを紹介した。
BANDAI SPIRITSは、2018年に設立されたバンダイナムコホールディングスの完全子会社。主にハイターゲット(大人向け)市場を対象に玩具、プラモデル、アミューズメント景品などの企画・開発・製造・販売を行っている。バンダイナムコグループは、IP(知的財産)の世界観を生かした「IP軸戦略」を進化させることでさらなる成長を目指している。BANDAI SPIRITSはその中で「ガンプラ」やフィギュアなど大人・コアファン向けの商材を扱うホビーユニットの中核を担い、海外比率約3割のグループのグローバル拡大に貢献している。
同社は多言語化された海外EC事業において、各国法令順守やセキュリティの確保、そして問い合わせ対応の迅速化を目的に、Zendeskが提供するカスタマーサービスソリューション「Zendesk」を導入した。現在、プレミアムバンダイは北米、中国、シンガポール、欧州など8エリアに展開しており、IP人気の高まりに伴い世界市場は拡大している。しかし、海外サイトのCS(カスタマーサービス)業務を担当することになった仲居氏は、CS未経験という状況に加え、海外展開におけるGDPRなどの個人情報保護や各国法令の順守、問い合わせ殺到への懸念といった山積する課題に直面していた。
特に、コールセンター、物流会社など約13社が関わる海外の事業構造において、厳しい要件に対応し情報を安全に管理する必要があった。こうした背景のもと、Zendeskの導入が進められた。採用の決め手となったのは、セキュリティと法令順守の側面の高い評価だった。個人情報保護が厳しい地域であるヨーロッパ(フランス)のサイト立ち上げ時、当時使用していた複数のツールが契約の見直しを求められる中、Zendeskだけが「安全だ」と判断され、継続利用が許可されたという。
さらに、顧客の個人情報の安全性を高めるため、Zendeskの「Advanced Data Protection(ADP)機能」を活用し、データの保管場所選択や暗号化、アクセスログ機能などを導入。これにより、余計な作業を増やすことなくスムーズに事業展開を進められ、より安全に個人情報を扱える体制が構築された。
Zendeskの真価が発揮されたのは、2024年7月にプレミアムバンダイの海外サイトがリニューアルされた際に発生した、問い合わせ件数が通常の約10倍に急増した時だ。仲居氏は直ちにZendeskのベンダー担当者に相談、推奨されたのがZendeskのAI機能「インテリジェントトリアージ」の活用だった。
インテリジェントトリアージは、AIが各国言語で寄せられた大量の問い合わせを読み込み、内容を要約し、配送状況、ログイン、決済などの項目に分類してくれる機能。この機能により、オンライン上で何が起きているかを瞬時に把握し、迅速にシステムチームへ連携できたことで、急増した問い合わせ対応で発生する問題を最小限に抑えられた。
また、問い合わせが英語や中国語といった多言語で書かれていても、その内容や目的、さらには顧客が「怒っているか喜んでいるか」といった感情までもが日本語で表示される。これにより、多忙な中でも「正確な状況把握が可能となり、大変助かった」と仲居氏は語っている。システムに不慣れな関係者に対しても、使い方を教えずとも内容が把握でき、スムーズに全社的な対策へと進められた点も、導入効果として高く評価している。
Zendeskによる迅速な対応でトラブルを乗り越えたことで、米国ニューヨークで毎年開催される北米最大級のポップカルチャーイベント「ニューヨークコミコン」などのイベント出展やキャンペーンを予定通り実施できた。この海外サイトでの活用実績を受け、BANDAI SPIRITSでは海外サイトの約10倍以上もの規模を持つプレミアムバンダイの日本サイトにもZendeskを導入することが決まっている。同社はZendeskを活用し、膨大な問い合わせをさらに適切に処理していく方針だ。
最後に、仲居氏は自身の奮闘経験を踏まえ、ITツールと協力者がいることの重要性を強調した。
「システムも英語もダメな私が、みんなに助けてもらいながら、なんとか運営できている。必死にもがいてやっている。」(仲居氏)