Berryは、医療機器向けQMS(品質管理システム)サービスの機能強化を目的に、アマゾンウェブサービス(AWS)の生成AIサービス「Amazon Bedrock」を採用した。12月8日、Berryが発表した。開発プロセスの効率化により、新機能の検証期間を大幅に短縮した。医療機器メーカーの業務負担軽減と品質向上につなげる考えだ。
Berryは医療機器メーカーとしての経験を活かし、クラウド型QMS「QMSmart」を提供している。医療機器業界では、QMS省令やISO 13485といった厳格な法規制への対応が求められる一方、専門人材の不足や膨大な文書作成業務が課題となっている。同社はこれらの課題解決に向け、AI技術の活用を模索していたが、機密情報の取り扱いや、専門性の高い領域での精度確保に技術的なハードルを感じていた。
そこで、セキュリティと開発効率を重視し、AWSの生成AI基盤であるAmazon Bedrockの採用を決めた。選定にあたっては、長年のAWS利用実績による信頼性や、既存データとの連携のしやすさを評価した。特に、医療機器業界で求められる高いセキュリティレベルに対し、Amazon Bedrockの「Guardrails」機能で十分な防御効果が得られることを確認した点が決め手となった。Guardrailsは、生成AIアプリケーションで有害・不適切な入出力やポリシー違反を防ぐための"安全レイヤー"機能だ。他にも、複数のAIモデルを容易に切り替えて検証できる柔軟性も採用のポイントになった。
導入前、Berryは医療機器という専門分野でのAI活用には、RAG(検索拡張生成)やモデルのファインチューニングが不可欠と考えていた。しかし、Amazon Bedrockを用いた検証の結果、システムプロンプトの工夫(プロンプトエンジニアリング)のみで、医療機器に特化した高精度な回答が得られることが判明した。これにより、従来はRAGを用いた検証に約1カ月を要していた工程が、約1週間へと大幅に短縮された。
この開発プロセスの革新により、QMSmartには「規制適合性チェック」「根本原因分析支援」「テストケース自動生成」の3つのAI機能が実装された。これらの機能により、ユーザー企業では規制適合性の確認業務の効率が50%向上したほか、教育用テスト問題の作成時間が半日から15分に短縮されるなど、劇的な生産性向上が確認されている。また、属人化しやすい原因分析業務の標準化にも寄与している。
Berryは、「Amazon Bedrockの活用により、専門性が高い医療機器QMS業務もプロンプトエンジニアリングで対応できることがわかった。特にGuardrails機能により、高いセキュリティレベルを確保しながら安心してAIを活用できる」としている。今後は、医療機器領域に特化した機能の精度向上や規制要件への対応範囲拡充を進め、実運用での価値を高めていく方針だ。