神奈川県横須賀市は、インフォマートが提供する「BtoBプラットフォーム 請求書」「BtoBプラットフォーム 契約書」「BtoBプラットフォーム TRADE」を活用し、会計事務を含む庁内DXを推進する。11月12日、インフォマートが発表した。見積もり依頼から支払いまでのプロセスを一貫してデジタル化することで、職員の作業時間を削減し、ペーパーレス化を実現。今後は、取引の透明性が担保された運用体制の確立を目指す。
横須賀市は、「スマートシティの推進」と「生成AIのさらなる活用」を重点施策として掲げ、デジタル技術による市民一人ひとりの暮らしの質の向上と、より効率的な行政経営を目指している。その一環として、会計事務のDXを推進するため、電子請求システムの導入検討を2020年頃から進めてきた。
同市では、約3000社に及ぶ大小さまざまな事業者と日々契約や取引を行っており、授受する見積書、契約書、納入書、請求書などの処理に多大な事務負担が発生していた。特に請求書は学校を除いて年間で約4万通を受領しており、これに紐づく帳票の印刷やファイリング作業が各部署の業務を圧迫していた。
紙の請求書は郵送、持参、FAXなどさまざまな方法で受け取られ、個別対応が必要だった。不備による差し戻しや再提出の手間も頻繁に発生し、部署ごとの運用が標準化されていないことも、市役所全体の業務最適化と効率化を阻害する要因となっていた。これらの課題を解決するため、2024年12月にBtoBプラットフォームシリーズを導入した。
インフォマートのBtoBプラットフォームシリーズを選定した決め手は、請求プロセス全体をカバーできる機能性と、既存の財務会計システムとの連携が可能な点だ。見積もり依頼から契約、請求、支払いまでをワンストップでデジタル化できるため、「完全にデジタル化されたワークフローによる自動処理を実現したい」という同市の理想像に近づけることができると判断した。
また、日本全体の民間企業の約3分の1に相当する約114万社(2024年12月時点)がBtoBプラットフォームを利用しているという実績も、大きな安心感につながった。
同市は、すべての事業者に一律での利用を義務付けるのではなく、財務会計システムの支出伝票データを分析し、取引件数の多い上位350社を主な対象として利用を呼びかけた。これにより、年間受領する請求書の70~80%をカバーしつつ、最大の効果が期待できる数値で導入を進めたという。
BtoBプラットフォームの導入により、電子請求書に移行した分については、職員の作業時間削減とペーパーレス化が確実に進んだ。また、支払通知機能を活用し、所属部署ごとだった支払いを集約した「まとめ払い」を実現したことで、振込手数料の削減効果も現れている。
同市が最も大きな成果と捉えているのは、これまで各部署でばらばらに行われていた会計事務が標準化され、"見えていなかった課題"が顕在化したことだ。BtoBプラットフォーム TRADEとBtoBプラットフォーム 請求書の利用により、電子取引の流れや支払処理のステータスが可視化された。これにより、請求書受領から支出伝票起票までの日数が職員によってまちまちであることや、差し戻し理由などが把握しやすくなり、会計業務のDXに向けた大きな前進であると評価している。
横須賀市デジタル・ガバメント推進室 推進担当 主査は、「直近の取り組みとして、BtoBプラットフォーム 契約書の利用拡大を控えている」「最終的なゴールは、すべてのデータが一元的に連携され、職員と事業者の双方の利便性を向上するとともに、取引の透明性が担保された運用体制を確立することにある」と述べている。