デンソーは、オフィス業務に従事する約3万人の全従業員を対象に「Microsoft 365 Copilot」を採用した。3月12日、導入と定着化を支援した日本ビジネスシステムズ(JBS)が発表した。生成AI(人工知能)を全社的な業務改革の基盤として活用した結果、2025年11月時点で月間利用率は99%に達した。今後は国内外のグループ全体16万人への展開を見据え、さらなる活用高度化を目指す。
デンソーは自動車部品やCASE関連システムの開発・製造を担うグローバル企業。同社は生産年齢人口の減少や不確実な事業環境の変化に対応するため、2030年までにデジタル活用人材を100%にする目標を掲げている。「生成AIを使わないこと自体がリスク」という経営トップの強い危機感から、一部の部門に留まらない全社的なAI活用の環境構築に着手した。
AI基盤としてMicrosoft 365 Copilotを選定した理由は、入力データが学習に利用されないセキュリティ上の信頼性と、既存の業務基盤であるMicrosoft 365アプリとの親和性を評価したためだ。2023年10月からIT部門を中心とした300人規模での先行利用を開始。2024年4月には希望者6000人に対象を拡大して効果検証を行い、製造現場での議事録作成による日勤・夜勤間の情報共有スムーズ化などの成果を確認した。これらを経て、2024年10月に本社約3万人の全従業員への展開に踏み切った。
3万人規模でのAI活用定着を実現するため、伴走パートナーとしてJBSを選定した。デンソーは、JBSが自社での実践に基づく豊富なノウハウを持っている点や、受講者のスキルレベルに応じた充実した教育コンテンツを柔軟にカスタマイズできる点を評価した。また、すでに別プロジェクトで進めていたMicrosoft Power Platformを用いた市民開発の支援実績があったことも、選定の決め手となった。
導入プロジェクトでは、JBSが提供するeラーニング動画と研修を組み合わせた独自のトレーニングプログラムを実施した。これに加え、ユーザーコミュニティの立ち上げや、個別の疑問に対応する「なんでも相談会」の開催、利用状況を可視化する「Copilot診断」の活用など、組織横断的な支援体制を構築した。これにより、ITスキルの異なる幅広い従業員が自発的にAIを活用できる文化の醸成を図った。
取り組みの結果、当初の目標であった月間利用率85%を大幅に上回り、1回でも利用した従業員を含めると99%という高い数値を達成した。社内では「Copilotに聞いてみたら」というフレーズが共通語になるほどAI活用が浸透している。特に製造現場では、エージェント機能を活用したQ&Aの自動対応や作業要領書の作成支援など、現場主導の業務改善が加速している。これらの成果が認められ、推進チームは同社の社長賞を受賞した。
デンソーデジタル活用推進部デジタル人財変革室の林氏は、研究開発から製造、経理まで全てのプロセスが連携しているため、一部の滞りが全体のボトルネックになると指摘する。「誰一人取り残さない」という覚悟で取り組んだ結果、AIは従業員の能力を拡張する存在になった。今後は、この取り組みを国内外のグループ会社全体へと横展開し、企業価値のさらなる向上に寄与する。