出前館は、加盟店とユーザー双方の体験向上を目的に、リテールメディア広告ソリューション「Moloco Commerce Media」を採用した。5月27日、同ソリューションを提供するMolocoが発表した。2024年11月からは、新たな出店者向け広告プロダクト「オーダーブースト広告」の提供を開始しており、導入6カ月時点で平均ROASは1000%を超えた。出前館は、同ソリューションを活用してマーケットプレイスの収益性向上と顧客体験の最適化を進める方針だ。
出前館は全国47都道府県でデリバリーサービスを展開しているが、加盟店向け広告の費用対効果と、プラットフォームとしての拡張性に課題を抱えていた。従来主流だったクリック単価(CPC)型広告モデルでは、成果にかかわらず一定の広告費が発生するため、加盟店側の投資負担が大きかった。また、広告配信が十分にパーソナライズされていなかったことからクリック率が伸び悩み、ユーザー体験への影響を考慮して広告表示枠を抑制せざるを得ない状況だった。専門の運用担当者を持たない中小規模の加盟店は、広告に参加しにくい構造となっていた。
こうした状況を受け、出前館は固定費を抑えつつ、注文につながる可能性が高いユーザーとの接点を増やす施策として、AIを活用したリテールメディア広告ソリューションの導入を決定した。採用の決め手となったのは、日本国内で初となる成果報酬型のCPO(Cost-Per-Order)モデルである。広告から実際の注文が発生した場合にのみ課金される仕組みのため、加盟店は広告費と売上の関係を把握しやすく、コストリスクを抑えやすい。あわせて、加盟店が予算やコミッション率を自ら設定できる点や、Molocoによるデータに基づいた運用支援が提供される点も評価した。
新システムでは、ユーザーごとに異なる嗜好や利用傾向をAIで推定し、1対1のパーソナライズ広告を実現している。ユーザーの閲覧履歴や注文履歴をもとに、予測クリック率と予測コンバージョン率を算出し、その結果を踏まえて広告の表示順位をリアルタイムに最適化する仕組みだ。これにより、ユーザーにとって関連性の高い店舗やメニューが、アプリやWebサイト上の適切なタイミングで提示されるようになった。また、セルフサーブ型の管理画面を用意することで、専門知識がない中小の加盟店でも自ら広告キャンペーンを作成・運用できる。対応プラットフォームはAndroid、iOS、Webの全チャネルに広がっており、全国の加盟店が同じ仕組みを利用できる。
導入後の指標を見ると、広告のパフォーマンスは明確に改善したとしている。導入3カ月時点では、広告からのクリック数が従来比で2.7倍に増加し、クリック率は4%台に到達した。広告経由の注文数も3.3倍となり、広告枠の拡充が実際の売上増加につながっていることが確認された。さらに導入6カ月で、プラットフォーム全体の広告収益は2.3倍となり、平均ROASは1000%を超えた。成果報酬型CPOモデルが、加盟店の投資回収性とプラットフォーム側の収益拡大を両立し得ることが示された。
運用形態にも変化が見られる。導入12カ月時点では、セルフサーブ機能を利用する加盟店が全体の約70%を占めるようになり、中小規模の店舗も主要な広告主としてプラットフォーム内で存在感を高めている。全アクティブ加盟店に占める広告導入率は、導入当初と比べ約2.5倍の28%となった。3カ月間の継続利用率(リテンション率)は94%と高水準を維持しており、広告施策が一定の成果を上げていると評価されている。ユーザー側にとっても、関連性の高い広告が増えたことで、アプリ内の表示が実際の注文行動につながりやすくなった。
出前館で広告グロースを担当する山下英郎氏は、従来は広告出稿のハードルが高く、効果測定もしづらかったとした上で、CPO型モデルとAIによる自動最適化の導入により、加盟店が参加しやすく継続しやすい仕組みになったと述べる。セルフサーブ加盟店の比率が7割に達したことを、プラットフォーム全体の構造変化として位置付けている。