京王電鉄は、Databricksのデータレイクハウスプラットフォームを利用したグループ横断の顧客データプラットフォーム(CDP)基盤を構築した。11月14日、DatabricksによるCDP基盤構築を支援したナレッジコミュニケーションが発表した。これにより、サイロ化していた顧客データを統合し、AIを活用した顧客分析を通じてパーソナライズされた顧客体験の実現を目指す。
京王グループは、交通業、不動産業、ホテル業、建設設備業など5つの事業を展開する生活関連サービス事業者。同社は2020年頃からDXを推進しており、その一環として、グループで提供するWebサービスのID統合を進めてきた。ID統合により顧客の移動や購買に関する情報は集まるようになったが、各データを横断して分析するデータ統合基盤の構築と、AIを活用した顧客分析が主な課題となっていた。
同社はこれらの課題解決に向け、技術調査を進める中で候補となったDatabricksの採用を決めた。選定した決め手は3点あり、1点目は既存のAWSアカウントやAmazon Redshiftを利用した環境と共存でき、スムーズな導入が可能な点だ。初期投資を抑え、人的・金銭的・運用面の負担を軽減した概念実証(PoC)を実施できた点、AWS PrivateLinkによるセキュアな接続設定が可能で、既存のセキュリティポリシーを維持できた点も評価した。
2点目は、Databricksに標準搭載されている生成AI機能「AI/BI Genie」の活用で、Databricks SQLの知識がないビジネスユーザーでも自然言語でデータ集計・分析ができ、マーケティングプロセス全体を高速化できる点だ。3点目は、構築後の継続的なデータ活用と現場主導での意思決定加速を見据え、データを一元的に管理し安全に共有・分析できるDatabricksの仕組みが、安定運用に適した環境だと判断した点である。
ナレッジコミュニケーションは、国内最初期からのDatabricks認定パートナーとしての専門性の高さや、Databricks on AWSを利用した統合基盤開発の豊富な実績、アジャイルアプローチによる迅速な構築支援などが評価され、パートナーに選ばれた。
同プロジェクトでは、インフラの制限やネットワーク経路など独自の要件があったものの、AWSの閉域網内にDatabricksを構築したことで、セキュリティ面を気にせずに進められ、2カ月で本番稼働に到達できた。
京王電鉄経営統括本部デジタル戦略推進部企画担当課長補佐の菊池透矢氏は、「まず横断分析の定常化を進め、データの取得範囲拡充に取り組み、データの重なりを増やしていく予定だ。またAI/BI Genie機能で事業部門のセルフサービス分析を促進し、顧客動向の可視化を起点に、施策立案と検証の高速化へつなげていきたい」と今後の展望を語っている。同部企画担当の大野健太郎氏は、早期に日次データ取り込みや各種データを横断分析する環境が整い、セキュリティ面を気にせず進められたことで、2カ月で本番稼働まで到達できた点を高く評価している。